2016 Fiscal Year Annual Research Report
Preventive Investment and Relief Spending for Natural Disasters
Project/Area Number |
25245043
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山崎 福壽 日本大学, 経済学部, 教授 (10166655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬下 博之 専修大学, 商学部, 教授 (20265937)
日引 聡 東北大学, 経済学研究科, 教授 (30218739)
青木 研 上智大学, 経済学部, 教授 (70275014)
浅田 義久 日本大学, 経済学部, 教授 (70299874)
中川 雅之 日本大学, 経済学部, 教授 (70324853)
有村 俊秀 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70327865)
宅間 文夫 明海大学, 不動産学部, 准教授 (80337493)
川西 諭 上智大学, 経済学部, 教授 (90317503)
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Project Period (FY) |
2013-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 糸魚川大火 / 災害対策 / 地価データ / 危険回避度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、各種権利制度も含めた都市防災対策と事後的な災害復旧制度の現状を整理し、それらの組み合わせの効率性を動学的な観点から理論的に検証した。 第一に、災害の危険性が十分人々に認識されているにもかかわらず、多くの人々が便利さのために、危険な地域に住居を構え、それに対して、地方自治体が防災対策として、過大なインフラ投資を実施するメカニズムを、都市経済学のモデルを用いて明らかにした。災害時に危険な地域に住む被害者を救済することが政治的に要請されるが、これは明らかに時間整合的とは言えない。本来ならば、危険な地域への居住を抑制することによって、被害を減少させ、不必要な防災投資も抑制することができる。こうした原因が事後的な救済制度にあることを明らかにした。 第二に、なぜ木造住宅密集地域は危険であるにもかかわらず、建替えが進まないのかについて理論的に整理した。都市の代表的な居住形態である区分所有建物(マンション)は、旧耐震基準のもとで建築されたものが数多く存在するが、どの様な理由から建て替えが不可能なのかについて理論的に検証した。 ところが、平成28年12月に発生した糸魚川での大火は、木造住宅密集地域における大災害で、これは火事としては、近年では例のない規模のものである。言うまでもないことであるが、こうした大災害を事前に予測できるわけではない。そのため、従来からこうした地域を対象にして、周辺地域との地価や家賃の差異を分析していたが、この前例のない災害についても研究することの必要性が生じたため、予算の繰り越しを申請し、従来の研究方針を一部修正して、糸魚川地域の災害についても予算を振り分けた。 28年度は、こうした新たな災害現場でのヒアリングやデータの収集、モデルの修正に資金を投入したおかげで、将来の研究の向上が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年12月に発生した糸魚川での大火は、木造住宅密集地域における大災害で、これは火事としては、近年では例のない規模のものである。言うまでもないことであるが、こうした大災害を事前に予測できるわけではない。そのため、従来から被災地を対象にして、周辺地域との地価や家賃の差異を分析していたが、この前例のない災害についても研究することの必要性が生じたため、予算の繰り越しを申請し、従来の研究方針を一部修正して、糸魚川地域の災害についても予算を振り分けた。 そのため、研究全体の状況はいくぶん、遅れていると判断することもできるが、この新たな災害地域のデータの収集等を考慮すると、この遅れは不可避であったとも思われるし、将来の可能性を高めるという点では、順調であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、研究を集約して、一区切りつけることを目標とする。 第一に、地方自治体が防災対策として、過大なインフラ投資を実施するメカニズムを明らかにしたい。 第二に、どの様な理由から危険な建築物の建て替えが不可能なのかについて理論的に検証したい。 第三に、時間整合性の観点から、都市防災政策として望ましい開発規制のあり方を、各種の権利や制度のあり方とともに包括的に提案し、そのような規制に対する補償手段としての開発権や、その他の代替的手段に関する利用可能性について理論的、実証的に検討する。
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