2013 Fiscal Year Annual Research Report
企業の長期目標設定と持続的成長:経営財務論からの考察
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25245052
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
久保田 敬一 中央大学, その他の研究科, 教授 (00120858)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 絵理 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (20277700)
二階堂 有子 武蔵大学, 経済学部, 准教授 (20396899)
淺羽 茂 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (60222593)
青井 倫一 明治大学, その他の研究科, 教授 (70101889)
竹原 均 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (70261782)
小佐野 広 京都大学, 経済研究所, 教授 (90152462)
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Project Period (FY) |
2013-10-21 – 2016-03-31
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Keywords | 企業の長期成長 / サスティナビリティー / 株主所有構造 / 企業の長期投資行動 / ディスクロ―ジャーと価格発見 / ファミリービジネス / 創業者精神 / イノベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の初年度の平成25年度に、東洋経済新報社より大株主データベースおよび役員データベースを追加購入し、研究代表者久保田の前回科研において一部構築したデータベースを元に、全上場企業の10年間をカバーする長期データベースに拡張し、本年度の実証研究実行のためのデータ観察期間を拡張した。 平成26年度は、中央大学海外拠点のハワイ大学のShidler College of Businessの協賛を得て、9月の8日から11日の間Growth of Firms, Ownership, and Value: East meets Westの論題にて国際ワークショップを開催した。講演者をアメリカ(3名)、シンガポール、香港、ハワイ大学から招聘し、全34名の参加を得て、プロジェクトメンバーによる発表を含み、15件の研究発表が行われた。うち、3件は、Keynote Speechとして全体の視野を拡げる研究、また論文発表は、完成論文のセッションと新しいアイデアを聴衆と自由討論できるWork-in-Progressセッションとに分けて、参加者の問題の理解と今後の研究の方向を模索した。 本研究の一部は、科研メンバーにより学術雑誌Japan and the World Economyに、またメンバーによる過去のインタビューの成果を三田商学に掲載した。 研究代表者久保田は、International Institute of Public Financeにおいて、企業税制と株価の関係を、またピサ大の研究セミナーで上場企業のマーケットマイクロストラクチャー研究による、株価発見過程の研究発表を行った。また、久保田と研究分担者竹原は国際会計の学会であるIAAERの年次大会(フィレンツェ開催)において共同研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標は、複数の長期目標の実現が企業の持続的成長をもたらし、最終的に株価最大化をもたらすことを明らかにすることであり、そのために、データベースによる実証分析、理論モデル開発、アンケートによる定性的要因の確認と我々のオリジナルなデータベースとの突合せ、またアンケートでインタビュー可と回答した企業をインタビューする。調査対象企業群のうち、 同族企業にはsocioemotional wealth形成の目標があり、経済動機のみで行動を説明できない。 非同族企業も卓越性を持続しようとする目標とcorporate wealth の蓄積を目指す。日本の長寿企業はそれぞれ、これらが創業者精神から継続している可能性がありその識別を目指そうとしている。 そのため、株主所有構造を明らかにしながら、これまでに構築した10年間の上場企業データベースを元に、進行中の実証研究の観察期間を10年間に拡張し、大口株主の影響にも同時に注目した実証研究にも新たに着手する。契約理論を使ったステークホルダーの相互作用を説明するモデル開発は、困難な作業で現在遅延しているが、これらの成果を元にモデルの開発を目指す。 上場企業対象アンケートは、今年度スタートさせるが、企業選択(長寿企業のみ)のために上記データベースを用い、その回答に基づき、年度後半にインタビューを行う。 長寿企業の秘訣、投資行動の解明については、メンバーそれぞれが学会等で資料収集するだけでなく、H26年度にはハワイ大学Shidler School of Businessの協賛の下で国際ワークショップを開催し、多くのヒントを得たが、引き続き今年度は、インディラガンジー研究所の協賛の下で、国際ワークショップを開催する。インドは、会社法が新しく改正されており、長寿企業があり、また近年の企業発展が目覚ましいことから、論題の研究のための多くの示唆が得られると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
構築した10年間の上場企業のデータベースを元に、実証研究を進める。とりわけ、データベースの大口株式ブロックの所有者分布に注目、仮説設定および検証を行う。ファミリービジネスを中心として、また創業者精神が生きている非ファミリー企業も含めてイノベーションの役割の研究も行う。 長寿企業を限定対象とした全上場企業アンケート調査を実施、回答後、上のデータベースとの突合せ、結果のまとめを行い、回答を元にして、数社の企業インタビューを行う。 9月に、ムンバイのインディラガンジー研究所と共催で、国際ワークショップ(論題:Long-Term Growth of Firms and Corporate Governance)を開催、参加者、招聘予定研究者(香港およびタイ)、インドの複数の研究者と、会議中の論文発表、また討論および意見交換を行い、論題のための知見を蓄積する。 研究代表者久保田と研究分担者竹原の共同論文はAsian Finance Associationで採択済みで、他にも投稿中である。同じく、日本ファイナンス学会では、2本の論文発表が採択済みである。研究分担者淺羽は同族企業R&D投資活動の論文の改訂を、学会等で発表する。久保田は、研究分担者小佐野、研究協力者Harrisと後継経営者選択契約理論モデルの開発を進めてきているが、契約モデルに定性的な変数をどう盛り込むかが課題である。企業資本構成問題は、研究協力者Titman教授の、ディスクロージャーの質の研究は、研究協力者Chen准教授、Gu教授と討論を進める。 実証研究は、リターン構造の解明のための時系列構造の解明、価格発見過程、税率(消費税、法人税)変化の企業価値への影響の研究を続ける。投資最適停止問題、負債調達についても理論および実証研究を続ける。ディスクロージャーの質についての理論および実証研究も続ける。
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