2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25245055
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
辻 正雄 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (20063787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
薄井 彰 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (90193870)
内野 里美 専修大学, 商学部, 講師 (80409622)
榎本 正博 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (70313921)
海老原 崇 武蔵大学, 経済学部, 准教授 (00367129)
大鹿 智基 早稲田大学, 商学学術院, 准教授 (90329160)
奥村 雅史 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (30247241)
河路 武志 成蹊大学, 経済学部, 教授 (50257193)
古賀 健太郎 一橋大学, その他の研究科, 准教授 (40308169)
清水 信匡 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (90216094)
河 榮徳 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (80198639)
矢内 一利 青山学院大学, 経営学部, 准教授 (10350414)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 管理会計 / 会計方針 / 利益管理 |
Research Abstract |
平成25年度の研究実績は5点にまとめることができる。まず第1に、企業経営者の動機について先行研究を調査し、企業の目的論、経営者の行動の説明理論にもとづき、多様な企業の実体、企業の目的や経営者の行動の存在が多様な報告利益管理行動につながることを明らかにした。また、(1) モデル分析、(2) 実際の市場観察、(3) コーポレート・ガバナンス (企業統治) 研究という3つの視点から先行研究の研究成果を調査した。 第2に、経営者による会計政策を、(i)採用する会計基準の選択、(ii)新会計基準の適用時期の選択、(iii)一般に公正妥当と認められた会計方針から採用するものの選択、(iv)資産及び負債や収益及び費用等の額に不確実性がある場合における合理的金額の算定、(v)一般に公正妥当と認められた表示方法からの選択、という5つに分類する体系を提示し、それらに関する先行研究について検討を加えた。 第3に、利益平準化で利用される項目と利益平準化の目標となる利益について考察し、動機・誘因、株式市場の評価に関する先行研究について整理し、平準化の指標の精度向上や平準化された利益に対する株式市場の評価の検証などが今後の課題であることを明らかにした。 第4に、報告利益管理の実施方法に焦点を当て、発生主義会計に基づく会計的な項目を用いた裁量的な行動である (1) 会計的裁量行動と、実際の企業の実体を用いて裁量的な行動を行う (2) 実体的裁量行動に分けて先行研究を整理した。 第5に、報告利益管理の検出方法について先行研究の検討を行い、会計方針の選択や変更等、特定の処理に着目する方法から、回帰式等を用いて総額を推定する方向へと研究が進んでいることが示された。さらに、報告利益管理の検出方法はそれぞれ問題点を抱えているものの、問題点を緩和する方法を絶えず追求することにより研究が発展していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画は、第I部「会計政策(AP)および報告利益管理(EM)に関する先行研究の調査」を完了し、次年度以降に実施される第II部「AP/EM論の構築」および第III部「AP/EMに関する実証研究」の基礎を築くことであった。以下の成果が得られたことから「おおむね順調」であるとした。 第1に、企業の目的論、経営者の行動の説明理論にもとづき、企業の目的や経営者の行動の存在が、多様な報告利益管理行動につながることを導いた。また、(1) モデル分析、(2) 実際の市場観察、(3) コーポレート・ガバナンス (企業統治) 研究という3つの視点に依拠して、先行研究を論点整理することができた。 第2に、経営者による会計政策を、(i)採用する会計基準の選択、(ii)新会計基準の適用時期の選択、(iii)一般に公正妥当と認められた会計方針から採用するものの選択、(iv)資産及び負債や収益及び費用等の額に不確実性がある場合における合理的金額の算定、(v)一般に公正妥当と認められた表示方法からの選択、という5つに分類する体系を提示し、関連する先行研究を検討することができた。 第3に、利益平準化指標の精度向上や平準化された利益に対する株式市場の評価の検証などが今後の課題であることを明らかにすることができた。 第4に、発生主義会計に基づいた、会計的な項目を用いた裁量的な行動である (1) 会計的裁量行動と、実際の企業の実体を用いて裁量的な行動を行う (2) 実体的裁量行動に分けて先行研究を整理することができた。 第5に、報告利益管理の検出方法については、会計方針の選択や変更等、特定の処理に着目する方法から、回帰式等により総額を推定する方向へと研究が進んでいることを明らかにし、検出方法はそれぞれ問題点を抱えているものの、問題点を緩和する方法を絶えず追求することで研究が発展することを確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間2年度目(平成26年度)では、第II部「AP/EM論の構築」および第III部「AP/EMに関する実証研究」に関する研究を行う。第I部「AP/EMに関する先行研究の調査」において明らかになった知見や、AP/EMに関する複数のアプローチに基づく論点を把握し、それぞれのアプローチの長所・短所を十分に理解した上で、わが国の経営者のAP/EMを現実的に説明しうるような理論構築を進める。なお、構築される理論が、論理的妥当性を具備すべきことは言うまでもない。また、現実的な理論であるかどうかは、第III部においても検証される。しかし、それだけでは不十分と考え、実務界においてAP/EMの決定に関与している研究協力者の協力を得て、現実的妥当性も検証する。さらに、学会報告等を行うことを通じて、広く研究者からの意見収集も行う。それぞれのプロセスを経て得られた結果のフィードバックによって、さらに精緻な理論構築を行う予定である。 続く第III部「AP/EMに関する実証研究」においては、第II部「AP/EM論の構築」で明らかにされたAP/EMの体系に従って、マクロレベルのAP/EMとミクロレベルのAP/EMについて仮説検証型の実証研究を行う。さらに、第III部「AP/EMに関する実証研究」に基づいて、第II部「AP/EM論の構築」のブラッシュ・アップをおこなう。 研究の成果については、学会等において報告をおこなう。IFRSへのコンバージェンスが進行すれば、本研究課題において明らかにせんとするAP/EMの理論および実証研究の成果は、世界共通の課題に対する解答ともなりうるだろう。そこで、海外の学会等においても成果報告をおこなうことを予定している。さらに、本研究課題の研究成果は、AP/EMに関する理論と実証の体系的な研究成果となることが見込まれており、和文および英文の書籍として刊行することを目指して研究を進めていきたい。
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