2015 Fiscal Year Annual Research Report
乳幼児における公平感の発達的起源とそのプロセスの解明
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25245067
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
板倉 昭二 京都大学, 文学研究科, 教授 (50211735)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 和生 京都大学, 文学研究科, 教授 (80183101)
北崎 充晃 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90292739)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 公平感 / 向社会行動 / 乳児 / 援助行動 / 脳波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は懸案事項であった脳波計測が大きく進展した.まず,成人を対象とした実験では,乳児の実験で用いた刺激を呈示し脳波の計測を行った.刺激は,2種類のアニメーションのエージェントが良い行い(他者を助ける)あるいは悪い行い(他者の行為を妨害する)をする場面を先行呈示し,その後,それぞれのエージェントがイチゴを分配するが,公平に分配する場合と不公平に分配する場面を呈示する.成人脳波実験の結果,実験結果、公平感と社会的評価に関係があると言われているP300とLPP成分で有意な結果が観察された。C4領域のP300(刺激呈示後250-500ms)区間で社会的評価の主効果があった。Post hoc分析によると、Helper条件でのP300の振幅がHinderer条件でのP300の振幅より高かった。LPP(刺激呈示250-500ms600-1100ms)区間ではF3とFz領域で公平感条件の主効果があったが有意傾向だった。しかし、LPP成分の区間をより細かく分け分析した結果、Fz領域の800-890ms区間で公平感の主効果が観察された。さらに、社会的評価と公平感の交互作用は有意傾向だったためPost hoc分析をした結果, Hinderer-公平条件の振幅がHinderer-不公平条件の振幅より高かった。 乳児に関しては,援助行動の発達と公平性の関係を検討するために,まず10ヶ月児と15ヵ月児を対象に,out-of-reaching taskを用いて援助行動(helping)の発達を調べた.その結果,10ヶ月では援助行動は十分に確認できなかったが,15ヵ月児は援助行動が出現した.一般化線形モデルを用いて,性別,第1子か否かが課題の成功率に与える影響を分析したが有意な影響は見られなかった.今後は,母親の養育態度との関連等を見ていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
紙面の関係で,上述の実績概要に書ききれない成果もあり,おおむね順調に進展している.例えば,ロボットとヒトを刺激として,それぞれのエージェントに対する痛みの共感に関する脳波計測も行い,ヒトはロボットに対しても同様に共感を示すことがわかったが,その脳波の時間的成分は異なっていた.ヒトに対する共感はボトムアップで生じ,ロボットに対してはトップダウンで生じるものと解釈された.本研究は,Scientific Reportsに掲載され,国際的なメディアに多くの取材を受けた.さらに成人を対象にした研究ではあるが,幾何学的な刺激に目を入れたエージェントに対しても,資源を公平に分配することを好むことがわかった.この成果は,The 2015 International Conference on Advanced Information: Concepts, Theory, and Application (ICAICTA 2015)において,Best Paper Awardを受賞した. また,幼児を対象にした実験で、将来必要となる情報を選択的にあらかじめ手に入れておく行動が出現するか否かを検討し、5歳児ないし6歳児にはこれが可能 であるが、発達的変化も見られることを明らかにした。 また,日本心理学会において,米国ワシントン大学のJessica Sommerville博士を招き「公平感と向社会行動の発達とその神経基盤」と題したシンポジウムを開催し,好評を得た.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度となるので,不足分のデータを収集し,結果の発信に努める.さらに,公平感と向社会行動の関係を捉えるために,複数の援助行動課題をすでに用意しており,データ収集に努める.アイトラッカーを用いた援助行動課題もすでに実験を開始した.これは,本実験では、事象予測法(アイトラッカー使用)と期待違反法が用いられる。まず、馴致フェイズでは、それぞれのアニメーションキャラクターが赤いボールで遊んでおり、衝立を隔てては、そのボールが取れない状況を呈示する。すなわち、このアニメーションでは、キャラクターがボールで遊ぼうとする意図が示される。次にテストフェイズでは2種類のテストが実施される。アイトラッカーを用いた事象予測テストと期待違反テストを実施する。また,比較文化研究として,ドイツおよびカメルーンでも同様の実験を推進し,日本を含めた3国間の比較を行う.また,乳幼児の脳波実験も開始できる予定である. 成果の公開方法としては,米国ニューオオリンズで開催される国際乳児学会(International Society of Infant Study: ISIS)および,リトアニアにて開催される国際行動発達学会(International Society for the Study of Behavioral Development: ISSBD)にてシンポジウムを企画しており,発表予定である.
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Research Products
(21 results)
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[Journal Article] Goal attribution toward non-human objects during infancy predicts imaginary companion status during preschool years.2016
Author(s)
8.Moriguchi, Y., Kanakogi, Y., Todo, N., Okumura, Y., Shinohara, I. and Itakura, S.
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Journal Title
Frontiers in Psychology
Volume: 7.221
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Measuring empathy for human and robot hand pain using electroencephalography.2015
Author(s)
Suzuki, Y., Galli, L., Ikeda, A., Itakura, S., and Kitazaki, M.
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Journal Title
Scientific Reports,
Volume: 5
Pages: 15942
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] The role of social eye-gaze in children's and adults' ownership attributions to robotic agents in three cultures2015
Author(s)
Kannegiesser, P., Itakura, S., Zhou, Y., Kanda, T., Ishiguro, H., & Hood, B.
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Journal Title
Interaction Studies
Volume: 16
Pages: 1-28
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] 向社会行動の発達2015
Author(s)
板倉昭二
Organizer
日本赤ちゃん学会第15回学術集会
Place of Presentation
かがわ国際会議場 香川
Year and Date
2015-06-27 – 2015-06-28
Invited
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