2013 Fiscal Year Annual Research Report
対保護者トラブルの予防と解決のための研修プログラムの構築と効果に関する学際的研究
Project/Area Number |
25245073
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小野田 正利 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60169349)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 晴雄 日本大学, 文理学部, 教授 (00245995)
吉川 武彦 清泉女学院大学, 人間学部, 教授 (10101453)
野田 正人 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (10218331)
古川 治 甲南大学, 教職教育センター, 教授 (10425382)
楠 凡之 北九州市立大学, 文学部, 教授 (30244776)
松本 剛 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (30330111)
和井田 節子 共栄大学, 教育学部, 教授 (30510804)
岩切 昌宏 大阪教育大学, 学校危機メンタルサポートセンター, 准教授 (50283841)
山野 則子 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (50342217)
瀧野 揚三 大阪教育大学, 学校危機メンタルサポートセンター, 教授 (60206919)
西川 由紀子 京都華頂大学, 現代家政学部, 教授 (60249365)
新井 肇 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (60432580)
嶋崎 政男 神田外語大学, 外国語学部, 教授 (60636851)
小林 正幸 東京学芸大学, 教育学研究科, 教授 (70272622)
山下 晃一 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (80324987)
岩永 定 熊本大学, 教育学部, 教授 (90160126)
橋本 典久 八戸工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90295957)
入澤 充 国士舘大学, 法学部, 教授 (90307661)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 保護者対応 / 教員研修 / トラブル / クレーム対応 / 研修教材 / 研修プログラム |
Research Abstract |
1.都市部だけでなく農山村部においても、いまや幼・保育園から大学に至るまで、はては民間の教育産業も含めて、その直接の当事者である児童・生徒・学生に向き合うことよりも、その背後にいる親権者あるいは学資負担者としての保護者からの要望・要求が急増し、時にその対応に苦慮することは日常茶飯事の状態となっている。これらを広く「保護者対応問題」ととらえて、受け手の学校の教職員が、こういった不可避な現代的課題に直面した際の対応能力や、トラブルの解決に向けて対応を見通す意識を高めていくことが、単にその場しのぎの解決を超えて、さらに進んだ「保護者との良好な関係づくり」につなげることが可能となろう。 2.研究1年目となる今年は、研究代表者を含めた研究分担者19名、これに精神科医や弁護士、カウンセラー、ソーシャル・ワーカーなどの実務専門家14名の研究協力者を加えた研究組織をつくり、大きく「学校経営および連携チーム」「教育相談チーム」「生徒指導チーム」の3つに分けて、それぞれの研究課題の抽出にあたった。研修プログラムの作成は、教職員の職種別および経験年数別に求められる課題を想定しつつ、実際の学校の校内研修で自律的に活用可能なものを制作することを確認した。研究総会は、6月15日、9月28日、3月15日の計3回、大阪大学で開催したほか、チームごとに個別連絡をおこなった。 3.対応が難しいトラブル事案に遭遇することも増えつつある。このため、保護者を提訴した原告教師を招いて事例検討会をおこなったほか、「半公開学習会」(大阪大学近くの教育委員会や学校関係者が傍聴可能で、研究会の成果をシンポジウムの形で社会還元していく方法)として、9月28日には「学校組織と教職員のこころの危機的状況にいま緊急に必要なメンタルヘルス対策」、3月15日には「メンタル面での不安定さを抱える保護者と向き合うために(1)」を開催した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.今年度は4年計画の第1年目であるために、学校が抱える対保護者とのトラブルや近隣住民との関係について、広く総合的に現状の検討をおこなった。その中で確実に言えることは、学校としての保護者との関係づくりの対応力は上がってきてはいるが、学校内部的には、世代交代に伴う若手・経験年数の少ない教職員の増加と世代間交流の難しさによって、ノウハウがすべての教職員に伝達されにくくなってきていること、そして学校外部的には、ますます保護者からの要求や要望の内容が複雑化および無理難題化する傾向を高め、かつその訴え方の手段が極めて高度になってきているということであった。 2.本研究にかかわるメンバーは、精神医学、心理学、福祉学、法律学、社会学、教育学などの多岐にわたるが、それらの有機的な連携によって生み出された研究の成果を、より広く社会還元していく方策をとることが必要であると考えた。このための半公開学習会を開催して、そこに多くの傍聴による参加者が集っている。また、地方に出向いての研修の場を設けることで、保護者対応問題に向き合う教職員の力量形成に貢献できているといえる。 3.研修プログラムの構築のために、当初の計画では、一つの学校、ある教育委員会という地域を特定して、研修の実施以前と事後の効果測定を考えていたが、それは相当に難しいことが判明した。このため、ある研修(ワークショップ)をする前のトラブルに対する見方や認識が、研修後にどのように変化したかの違いを見ることの方が意味あるものと考えた。このため研修の事前段階と事後のアンケート調査をすることで、研修プログラムの効果測定や改善課題を明らかにする方向へとシフトした。 4.本研究のために集まった研究協力者・研究分担者のところには、全国各地から多くの研修講師の依頼が来ており、それらの実際の研修成果をまとめることで研究課題を遂行していきたいと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.9月28日に開催した研究総会において、最終年度のゴール(目標設定)を次のように、暫定的に確認した。 ①教員養成段階、初任、若手、中堅、生徒指導、教育相談、管理職などの年齢や役職、あるいは保育園・幼稚園・小学校~高校、支援学校などの校種といった研修対象別に、②特定の能力の獲得や向上を目指して(例:ロールプレイによって保護者対応力を身につける、保護者をモンスター化させないテクニック、難しくなっていくトラブル事案の見立てとケース会議の仕方、など)テーマを設定し(上級編・中級編・初級編という方法もあってよい)、③1時間ないし2時間程度の校内研修会(あるいは地域でのテーマ別研修会)の機会で、本研究会のメンバーが講師とならなくても済むような(つまり教師たちが自分たちで)、そのキットを使えば「保護者を敵ととらえない」(あるいは「教師を敵としない」という逆に保護者向けのものも考えられてよい)対応の力量をつけていくことのできるような、④具体的な教材キット(仕様書付きの教材:冊子、道具、DVDなど)を作成する。 ⑤それを5セットほど複製し、大阪大学の研究室に常備し、利用申し出のあった機関・団体、学校、個人に貸し出す。⑥種類は最低でも10種類以上は用意したい。研究分担者・研究協力者個人ではなく、チームでの作成でも可能とする。これらは、学習してもらう内容を入れ込んだパワーポイント教材でもよいと考える。 2.数年前から積み重ねてきた、研究会メンバーと教育委員会や研究団体がいっしょになって全国各地で企画する「先生を元気にする集い イン ○○」の集いを継続的に開催することとし、来年度は静岡県富士市と福岡県北九州市で開催する。 3.難しくなる保護者とのトラブルの背景や解決を目指す本研究会の成果を社会還元するために「半公開学習会」を継続的に開くこととし、来年度は「いじめ法と保護者対応問題」を扱うことにした。
|
Research Products
(28 results)