2015 Fiscal Year Annual Research Report
対保護者トラブルの予防と解決のための研修プログラムの構築と効果に関する学際的研究
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25245073
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小野田 正利 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60169349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 晴雄 日本大学, 文理学部, 教授 (00245995)
野田 正人 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (10218331)
古川 治 甲南大学, 教職教育センター, 教授 (10425382)
楠 凡之 北九州市立大学, 文学部, 教授 (30244776)
松本 剛 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (30330111)
和井田 節子 共栄大学, 教育学部, 教授 (30510804)
岩切 昌宏 大阪教育大学, 学校危機メンタルサポートセンター, 准教授 (50283841)
山野 則子 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (50342217)
瀧野 揚三 大阪教育大学, 学校危機メンタルサポートセンター, 教授 (60206919)
西川 由紀子 京都華頂大学, 現代家政学部, 教授 (60249365)
新井 肇 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (60432580)
小林 正幸 東京学芸大学, 教育学研究科, 教授 (70272622)
山下 晃一 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (80324987)
岩永 定 熊本大学, 教育学部, 教授 (90160126)
橋本 典久 八戸工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90295957)
入澤 充 国士舘大学, 法学部, 教授 (90307661)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 保護者対応 / トラブル / クレーム / 研修プログラム / 教員研修 / 研修教材 / 近隣苦情 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.いまや学校(教職員)と保護者の間に生じるトラブルは、全国的な広がりを見せ、都市部だけでなく農山村部においても多く見られるようになった。そういったトラブルや紛争の解決は、渦中にある子どものためにも望まれるが、時として多くの労苦を伴うことも稀ではない。昨年(2015年)7月に文部科学省は、教職員の負担感調査結果を公表したが、そこでは第3位に「保護者や地域からの要望、苦情対応」(71%)があげられる状態となっている。 2.本研究では、わが国の教育課題の一つにラインナップされた「学校と保護者の関係づくり」あるいは「保護者対応トラブル」について、その解決のために、あるいは問題を大きくしないための教職員側の力量形成のための研修プログラムを構築することを目的としていた。 3.研究3年目の平成27年度は、総勢37名にも及ぶ研究組織(新新・学校保護者関係研究会)の総会を6月6日と3月26日に、大阪大学人間科学部で開催し、各自の研究推進状況の確認をおこなったほか、具体的なサンプルとして「初任者用のワークショップ」の事例、トラブルの構造を分析し学校として積極的に解決に乗り出すためのアセスメント技法としての「エコロジカル・マップの作成によるワークショップ」の実践事例を、模範として提示した。 4.同時にこの2回の総会では、その後に日本教育学会・近畿支部研究集会との共催で「学校・園と周辺住民とのトラブルをどう考えるか~教育施設の抱える近隣トラブルの特質と良好な関係づくり」(6月6日)、および「特別支援教育の現場における保護者と学校のズレはどこから生まれるのか?」を開催し、共に100名以上の教育関係者の出席があり、研究成果の社会還元として大きな成功を収めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.研究計画3年目となる今年度も、研究分担者および研究協力者が、全国各地の教育委員会、教育センター、学校・園などからの「保護者対応トラブルの解決」あるいは「危機管理上のトラブル」「保護者との良好な関係づくり」といったテーマでの研修講師依頼を受けて、それぞれの研修プログラムの試行実践に務め、同時に個別の問題事例についての助言や指導を重ねることで、着実な成果を生み出しつつあると考える。 2.毎年、全国の2・3箇所で、研究会メンバーがそろっておこなう出前型の研究内容の公表であり、研究実績を積む場でもある「先生を元気にする集い イン ○○」についても、8月6日に茨城県水戸市教育センターとの共催で、9月16日には新潟県下越地方生徒指導研究協議会との共催企画をもった。そこでは、全体講演、大喜利シンポジウム、複数のワークショップの場を設けたが、前者では約1500名、後者では約600名の教員が参加してくれ、この企画に対する高い評価を得ただけでなく、参加者の意見や感想から、研究テーマの遂行にあたっての手応え、および検討の課題を得ることができた。 3.研究発表欄に示すように、今年度は特に書籍の出版という形で、研究分担者・研究協力者のいくつもの研究成果が出始めたことが特徴的である。 4.この1年間を通して見ると、大きな変化は、2013年9月から施行に入った「いじめ防止対策推進法」による影響が相当にあるということが指摘できる。すなわち保護者と学校の間に生じる紛争やトラブルの中心部分に、子どもどうしのトラブル(いじめに相当する場合もあれば、ケンカの場合も、たんなるいさかいのレベルなど様々)が関係することで、よりトラブルの解決が難しくなり、複雑化する傾向を高めていることが懸念される。
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Strategy for Future Research Activity |
1.3月26日に開催した研究総会の場で、研究代表者自らが、一つの試行的研修プログラムを披露した。それは研究会メンバーの下には、全国の多くの教委や学校からの引き合いがあるが、大事なことは、研究会メンバーがそこにいなくても、自らの力で、保護者対応トラブルの解決能力を高めていく研修ができるようにする条件づくりをすることにある。このための学校現場で汎用が可能な教材キットを作成し、そこに研修リーダー用の指導書マニュアルと、受講者(一般教員)用の教材が用意されていることが必要だと考える。その総会では「エコロジカル・マップづくりを通して、難しくなる保護者対応トラブルの出口を見つけよう」と題した、一つのサンプルを提示した。 2.研究会メンバーのすべてが、それぞれにこれらを作り出すことは難しいにせよ、5ないし10近い教材キットができあがる可能性がある。それこそが本研究テーマで追究してきた成果物であるが、それらの完成に向けて努力を重ねていきたいと考える。 3.来年度は最終年度であるために、研究総会は年1回として10月10日に開催することを決定し、それ以外にも「生徒指導チーム」「教育相談チーム」「学校経営および連携チーム」ごとに個別のグループでの集会を持つことで、上記の教材キットの完成へとつなげていきたいと考える。 4.恒例となっている研究成果の社会還元としての「半公開学習会」(所属や氏名を明確にしての事前参加申込み方式でのシンポジウム)は、第8回を数えることになり、来年度は日本教育行政学会・大阪大会との共催で、10月8日に「教職員の労働実態と教育行政学の研究課題」と称して実施する予定である。ここでは部活動の運営をめぐって、保護者対応トラブルが頻発し、教職員が時として困難に陥っている実態があり、それらを多面的な角度から分析することを準備している。
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Research Products
(23 results)