2014 Fiscal Year Annual Research Report
位置制御シングルモード量子ドット・量子リングの伝導制御とその応用
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25246004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平川 一彦 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (10183097)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 量子ドット / テラヘルツ / 単一電子トランジスタ / 量子準位 / 帯電エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
自己組織化InAs量子ドットのように電子準位がごく少数のモードしか含まないような極限ナノ領域では、その物理が量子力学に支配され、非常に理想的で制御性のよいものになる。従って、bottom-up的極限ナノ構造を作製し、電極から電子を注入し伝導を制御できれば、次世代のエレクトロニクスに新しい局面を拓くことができるであろう。本研究では、極微小自己組織化単一InAs量子ドット・ダッシュ構造にナノギャップ電極により電気的にアクセスし、その電子状態やダイナミクスを明らかにするとともに、その応用を探索することを目的に研究を遂行している。 本年度は、テラヘルツ電磁波を用いた量子ドット(量子ダッシュ)の電子状態の解明とその応用に関して以下のような成果を得た。 1.長波長テラヘルツ電磁波を用いた単一量子ドットのサブレベル間遷移の観測:単一量子ドットを活性層とするトランジスタ構造において、量子ドットにアクセスするナノギャップ電極をテラヘルツアンテナと集積化することにより、単一量子ドットにテラヘルツ電磁波を集光するとともに、ドット内のサブレベル間遷移をテラヘルツ電磁波で誘起された光電流の変化として検出することに成功した。特に、サブレベル間遷移による光電流の生成過程において、中間状態の電子数の違いにより2種類のプロセスがあること、また殻が満杯ではないときには電子の配位の違いを反映して、複雑なスペクトルを示すことを見いだした。 2.量子ドット内の電子間相互作用とテラヘルツ・トンネル分光の比較:テラヘルツ光電流測定による励起準位エネルギーと量子ドットトランジスタのクーロン安定化ダイアグラムから求められる励起準位のエネルギーが、遷移則の違いにより感度が違うものの、いずれも多体効果を反映したものであることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、位置制御量子ドットやリングの作製を研究項目に挙げていたが、プロセスで不可避的に導入される結晶欠陥のために、電荷のトラッピング・デトラッピングによる信号揺らぎが大きく、有意義な成果が得られないと判断し、位置制御ドットの作製は中止した。その代わり、昨年度より、テラヘルツ電磁波による量子ドット、量子ダッシュの電子状態の解明や電子伝導との関係を明らかにする方向に比重を移動し、研究を遂行している。 単一量子ドットのテラヘルツ分光では大きな進展があり、量子ドットのサブレベル間遷移の観測に成功した。1meVを切る半値幅のサブレベル間遷移スペクトルの観測に成功したのは世界で初めての成果である。さらにサブレベル間遷移のスペクトルやテラヘルツ誘起電流は、電子間相互作用により大きな影響を受けていることが明らかになり、現在、論文にまとめつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
計画調書では、位置制御量子ドットやリングの作製を研究項目に挙げていたが、プロセスで不可避的に導入される結晶欠陥のために、電荷のトラッピング・デトラッピングによる信号揺らぎが観測されるため、中止した。量子ドットの位置制御を行わないで、再現性よく量子ドットにアクセスする新しい方法として、低加速電圧の電子顕微鏡で量子ドットの位置を確認し、それをもとに電極を作製する技術と、10nmを切る極微細ギャップを有する金属電極の新しい作製法に取り組みつつあり、明瞭な殻構造が見えるであろう直径40 nm以下の量子ドットに再現性よくコンタクトできるよう取り組んでいる。 また世界で初めて観測に成功した量子ドットのサブレベル間遷移であるが、それが観測できる条件、スペクトルの形状、ゲート電圧・ソースドレイン電圧に対する振る舞いが、電子のクーロン反発力やスピンの効果を反映したものであることがわかりつつあり、今後、サブレベル間遷移スペクトルの理解に注力していく予定である。
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