2013 Fiscal Year Annual Research Report
原子間力顕微鏡を用いた絶縁体表面でのナノ構造体の構築と電荷移動現象の解明
Project/Area Number |
25246027
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菅原 康弘 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40206404)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 艶君 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50379137)
内藤 賀公 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90362665)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 走査プローブ顕微鏡 |
Research Abstract |
1)カンチレバーの小振動動作・高周波動作による高感度化・高分解能化: 原子操作を高安定・高精度に行うため、原子間力顕微鏡の高感度化と高分解能化を実現した。具体的には、従来のカンチレバー(ばね定数k=40N/m、共振周波数f=150kHz)に比べて、ばね定数が大きく、共振周波数の高いカンチレバー(k=2,000N/m, f=2MHz)を導入し、小振動振幅(0.1nm程度)での安定動作を実現した。この結果、探針・試料間の相互作用時間が長くなり、力の検出感度が一桁以上向上した。 2)変位演出計の高感度化の実現: 原子間力顕微鏡の高感度化と高分解能化を実現するため、カンチレバーの変位検出計の低ノイズ化を実現した。具体的には、現有の変位検出計で問題となっている半導体レーザのモードホップノイズを高周波重畳により低減し、低ノイズ化を実現した。 3)静電気力分光法の高感度化の実現: 絶縁体表面上に形成される欠陥やナノ構造体の電荷状態を探るため、静電気力分光法の高感度化を実現した。具体的には、カンチレバーの高いQ値を利用し、探針・試料間に作用する静電気力を高感度に測定できるようにした。 4)3次元静電気力分光法の開発: 絶縁体表面での電荷移動現象を解明するためには、試料表面の3次元の静電気ポテンシャル分布を導出し、表面欠陥とナノ構造体との間の電荷移動に必要な障壁の大きさと電荷移動が生じる経路を議論することが重要である。そこで、探針・試料間距離を変えながら、静電気力によるカンチレバーの共振周波数の変化(周波数シフト)を3次元的に測定し、数値計算により、静電気力の3次元分布、さらにはクーロンポテンシャルの3次元分布を導出できるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画で重要な以下の4つの研究課題を順調に推進することができたためである。 1)カンチレバーの小振動動作・高周波動作による高感度化・高分解能化の実現 2)変位演出計の高感度化の実現 3)静電気力分光法の高感度化の実現 4)3次元静電気力分光法の開発
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の3つの研究課題について研究を推進する。 1)絶縁体表面の欠陥構造と電荷状態の解明: 原子間力顕微鏡と静電気力分光法を用いて、絶縁体表面の欠陥構造と電荷状態を測定する。ここで、表面の欠陥としては、原子空孔などの点欠陥およびドメイン境界の線欠陥などを取り上げる。なお、絶縁体表面としては、へき開により作成したNaCl(001)表面やNiAl(110)表面を熱酸化させて形成したアルミナ(0001)表面を取り上げる。この実験においては、現有の複合極限場原子間力顕微鏡だけでなく、極低温・超高真空原子間力顕微鏡(2台所有)も使用し、効率的に実験を進める。 2)構成原子数の明らかなナノ構造体の絶縁体表面への構築: ナノ構造体に閉じ込められる電子のエネルギー状態は、ナノ構造体を構成する原子数に大きく依存する。そこで、構成原子数の明らかなナノ構造体を絶縁体表面に構築する。なお、ナノ構造体の構成原子としては、金(Au)や白金(Pt)、パラジウム(Pd)などを取り上げる。 3)欠陥の影響のないナノ構造体の局所電荷状態の解明: 絶縁体表面において欠陥から遠く離れたところに形成したナノ構造体の電荷状態を解明する。具体的には、3次元フォース分光法や静電気力分光法を駆使して、ナノ構造体の次元(1・2・3次元)や原子種、原子数、構造が、局所電荷状態にどのように影響するかを解明する。
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Research Products
(9 results)