2014 Fiscal Year Annual Research Report
反陽子ヘリウム原子を 用いた陽子・電子質量比の精密測定
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25247032
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早野 龍五 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30126148)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 素粒子(実験) / 基礎物理定数 / CERN / 反陽子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、CERN研究所の反陽子減速器において「反陽子ヘリウム原子(ヘリウム原子核に、反陽子と電子が1個ずつ束縛された準安定な中性原子)」の精密レーザー分光を行い、基礎物理定数の一つである(反)陽子・電子質量比を世界最高精度で決定することを目指している。 平成26年度は、それまでLHC加速器のエネルギーアップグレードのために長期停止していたCERNの加速器群の運転が再開されたものの、反陽子減速器からの低速反陽子の取り出しが安定せず、当初予定していた実験、すなわち「1.5Kに冷却したヘリウムガス標的中で反陽子ヘリウム原子を生成し、二光子分光を行うことで、ドップラー幅を抑えた高精度分光」を行うことが出来なかった。 その代わりとして、以前から行っていた1.5Kに冷却したヘリウムガス標的を用いた「一光子」分光のうち、他の遷移に比して統計が少なかった反陽子ヘリウム3原子の(n,l)=(36,34)→(37,33)遷移と(34,32)→(33,31)遷移のデータを収集し、収集済みの他の11個の遷移データと合わせて、科学技術委員会CODATAに提供した。 それらの数値は、近々更新が予定されている基礎物理定数(CODATA2014)の推奨値決定に使われることになっている。 これらの結果について,CERN研究所で行われた国際会議Questioning Fundamental Physical Principlesや,ハワイで開催された2014年日米物理学会合同原子核分科会での招待講演で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上に述べた通り、主として長期シャットダウン後のCERNの反陽子減速器からの低速反陽子の供給に問題があったため、平成26年度に予定していた二光子分光実験の実施は見送らざるを得なかった(その代わりに比較的短時間・少ない量の反陽子でも実施可能な一光子分光実験を行った)。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は実験実施にやや遅れを生じたが、ヘリウムガス標的やレーザーなどは準備が完了しており、本年度、CERNの反陽子減速器の運転が順調であれば、当初目的通り、二光子分光を実施できる見込みである。 科学技術委員会CODATAに提供した一光子分光のデータについては、系統誤差を精査中であり、それが済み次第、論文投稿する予定である。
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