2015 Fiscal Year Annual Research Report
反陽子ヘリウム原子を 用いた陽子・電子質量比の精密測定
Project/Area Number |
25247032
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早野 龍五 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30126148)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 素粒子(実験) / 基礎物理定数 / CERN / 反陽子 / CODATA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、CERN研究所の反陽子減速器施設(AD)において「反陽子ヘリウム原子(ヘリウム原子核に、反陽子と電子が一個ずつ束縛された準安定な中性原子)」の精密レーザー分光を行い、基礎物理定数の一つである(反)陽子・電子質量比を世界最高精度で決定することを目指している。 従来よりも精度を向上するために、平成27年度は、1)二光子分光法を用い、反陽子ヘリウム原子の熱運動によるドップラー巾を大幅に減らす、2)更に、ヘリウム標的を1.5Kに冷却することで、反陽子ヘリウム原子の熱運動を抑止する、3)光周波数コムの安定性を改善する、の三点を重視して、反陽子ヘリウム原子の主量子数36、軌道角運動量34のレベルから、主量子数34、軌道角運動量32のレベルへの二光子繊維の測定を行った。 設置から10年以上経過し、安定性に問題が生じていた光周波数コムについては、(別経費で)エルビウム・ファイバー・コムで置き換えた。これにより、反陽子ビームを用いた長時間にわたる測定中であっても、レーザーのロックが外れることなく安定した測定が可能になった。 一方、測定の途中でヘリウム標的の薄膜窓に微量なリークが発生し、標的温度が5Kに上昇したため、平成27年度の測定データは当初目標としていた分光精度に達しなかった。この問題については冬季の加速器停止期間中に対処し、平成28年度の測定では所期の精度を達成する予定である。 なお、昨年までにデータ収集を完了した単光子分光法によるデータは、その解析を終了し、査読付き専門誌に投稿済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の通り、平成27年度の測定では標的窓にリークが発生し、標的を1.5Kまで冷却することができなかった。そのため、目標とする分光精度に到達していない。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の標的窓の問題は対策中であり、平成28年度の測定では当初目標としていた精度を達成できる見込みである。
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