2014 Fiscal Year Annual Research Report
ミュー粒子稀崩壊による超対称性理論検証のための究極性能を持つ測定器の開発
Project/Area Number |
25247034
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩本 敏幸 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助教 (20376700)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 素粒子実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
レプトンフレーバーを破る(LFV)ミュー粒子崩壊μ→eγを探索する国際共同実験MEGは、2013年にデータ収集を終了した。本研究グループは、これまでに得られたデータ解析を続ける一方、更に一桁高い感度を持ってLFVミュー粒子崩壊を探索、発見することを目標にした次世代実験、MEG IIの実現に向けて開発を続けてきた。
当該年度は、まず昨年度製作したプロトタイプ検出器用のMPPCの常温測定から開始し、単光電子の分離、ダークレート、ゲイン、クロストークとアフターパルス等の測定を通して性能を確認した。いくつかダークレートが高いものが見つかったが、我々にとっては低温での使用時にはダークレートは5桁落ちるため問題ではなく、また浜松ホトニクスは既にこの件については了承済みで実機に向けた製作ではこれらのMPPCは除かれる予定になっている。
プロトタイプ検出器用に新しいフィードスルーの開発に着手し、同軸ケーブルのように信号線がグラウンド層に覆われたようなデザインの基板を直接フランジに接着する斬新な方法にて大量のチャンネルを小さいスペースで低温容器から導き出すことに成功した。この結果プロトタイプ検出器で液体キセノン温度でのセンサーの性能評価が可能となり、また実機で使用予定のケーブル、コネクタから読み出し回路を合わせたノイズ測定等も行った。また、MPPCのエネルギー分解能が、検出光子数が増えると検出光子数から決まる統計精度に従って向上することを、小型試験装置を用いて高統計領域においても確認した。さらに浜松ホトニクスが我々の光センサーにクロストーク抑制技術を適用することに成功したため、より分解能が向上したMPPCが完成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度において液体キセノン中で使用可能な新しい光センサーMPPCの液体キセノン中での大量試験を行い、実機とより近い環境における性能確認をする、という目標は達成された。多チャンネルを実現するための細いケーブル、密度の高いフィードスルー、MPPC支持基板等の開発も順調に進んでおり、大きな問題は見つかっていない。また、浜松ホトニクスのクロストーク抑制技術の導入により、実機に使用可能なMPPCの製作を開始したことも、当初の目標を達成しており、順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度に製作を開始したMPPCの常温と低温での測定を行う。これまでに測定したクロストーク抑制機構のないセンサーに対する結果と比較し、MEG II実験に使用するための性能の総合評価、また安定性等あらゆる面から問題がないかどうか徹底的に調査する。
実機では、波形のテール部分の増加を防ぐために6mm角のセンサーを4つ直列接続して使用する。この接続方法には、2個並列2個直列にするか、4つ直列にするかの自由度があり、それぞれの基本パラメーターの測定結果をシミュレーションに組み込んで総合的に判断する。
また、液体キセノン保持用の冷凍機の性能評価方法を検討しており、必要に応じてプロトタイプ検出器にて性能確認を行う。このとき、同時にガス純化性能評価、光センサーの入射角度依存性等の測定も検討している。また、読み出し回路の開発状況に応じて、できるだけ早くフィードバックをかけるために実際の波形を取得して分解能の劣化等がないかどうかを速やかに確認していく。
|