2014 Fiscal Year Annual Research Report
フラストレート磁性体のカイラル秩序化と異常伝導現象
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25247064
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川村 光 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30153018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 年史 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80207183)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フラストレーション / 量子スピン液体 / ランダムネス / スピングラス / カイラリティ / カゴメ格子 / 厳密対角化 / モンテカルロシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
相互作用に強い競合を有するフラストレート磁性体は、スピンフラストレーションに伴う強い揺らぎの効果のため、しばしば、フラストレートしていない通常の磁性体とは異なった新奇な諸物性を示す。なかでも、スピン構造の右・左 ―「掌性」― を表すカイラリティ自由度の重要性が、近年の研究から明らかになってきた。本基盤A研究においては、典型的な幾何学的フラストレート磁性体である3角格子、カゴメ格子上の幾何学的フラストレート磁性体やランダムなフラストレート系であるスピングラス磁性体を対象に、フラストレーションやカイラリティを起源とする新奇な磁気秩序化現象や異常伝導現象の解明を目指している。26年度は(A)フラストレーション起源の量子スピン液体状態と(B)スピングラス磁性体におけるカイラルグラス状態等の新奇な磁気状態の解明に大きな進展があった。(A)については、ランダムな相互作用を持つS=1/2反強磁性ハイゼンベルグモデルの低温量子状態がギャップレスのrandom-singlet状態になっているという25年度の発見を、新たにカゴメ格子系に拡張した。即ち、カゴメ格子の場合、ランダムネスの強さを増していくと異なったタイプのスピン液体間で相転移が起き、高ランダムネス側では3角格子の場合と類似のランダムシングレット状態が実現することを見出した。また、これらの結果がハーバースミサイトで最近見出されている量子スピン液体的な実験結果と整合的なことを明らかにし、論文として発表した。(B)については、実験で重要となる磁気異方性 D をパラメータとしてのスピンとカイラリティの秩序化の問題に大きな進展があった。即ち D に0.05 程度の臨界値が存在し、その前後で系の振る舞いが定性的に変化することを新たに見出し、その詳細を大規模シミュレーションで精査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フラストレーション起源の量子スピン液体状態については、3角格子系のみならずカゴメ格子系についてもランダムネスが誘起する量子スピン液体状態を確認し、近年注目されている実験結果をコンシステントに説明することができた。また、スピングラス磁性体におけるカイラルグラス秩序については、磁気異方性の強さに関する予想外の振る舞いの変化を、新たに同定することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
ランダムネス誘起の量子スピン液体状態については、これまでの比熱や帯磁率、オーダーパラメータなどの熱力学諸量に加えて、新たに、静的・動的スピン構造因子等の諸量も計算し、スピン相関をより直接解析したい。また、スピングラス磁性体におけるカイラルグラス秩序については、低温秩序相のレプリカ対称性の破れのパターンについて、予想されるスピン-カイラリティ混合の効果に着目しつつ、大規模数値シミュレーションにより精査したい。
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Research Products
(9 results)