2013 Fiscal Year Annual Research Report
拡張アンサンブル法による蛋白質への小分子結合機構の研究
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25247071
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岡本 祐幸 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70185487)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分子シミュレーション / 拡張アンサンブル法 / レプリカ交換法 / レプリカ交換傘サンプル法 / レプリカ交換溶質焼き戻し法 / ドッキング / 創薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、計算機購入が結局次年度に繰り越されたために、主に、手法開発に力を入れた。まず、生体系の分子シミュレーションのためには、効率的な構造サンプル法の開発が必須であるが、遺伝的交叉による構造発生を組み込んだシミュレーション手法の開発に成功した。また、以前開発したレプリカ交換傘サンプル法に基づく、小分子とタンパク質のドッキングシミュレーションを実行し、自由エネルギーの最小状態として予測された結合構造が実験結果とよく一致することを示すことができた。更に、新たにレプリカ交換傘サンプル法とレプリカ交換溶質焼き戻し法を合体した2次元レプリカ交換法を開発して、一回のシミュレーションで、小分子がタンパク質に結合することと、結合状態から溶媒の方に離れていくことを繰り返すことが可能になった。以前は、小分子が一度タンパク質に結合してしまうと離れることができなかったが、それが何度もできるようになったので、結合の自由エネルギーの計算精度を上げることができるようになった。また、タンパク質構造を固定した小分子のドッキングシミュレーションと固定しないシミュレーションの両方を実行することによって、小分子が実験と一致する場所と構造でタンパク質に結合するためには、タンパク質の構造揺らぎが重要なことを示すことができた。これによって、小分子のタンパク質への結合に関する教科書の記述、すなわち、鍵と鍵穴の描像による小分子結合のメカニズムが、そう単純ではなく、小分子とタンパク質の相互作用によって、タンパク質の構造が揺らぐことが重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
構造サンプル法として、2つの新手法を開発することができた。小分子のタンパク質への結合に関する自由エネルギー計算の独自の理想的な手法の完成が近いと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度開発された新手法を幾つかの具体例に適用して、小分子のタンパク質への結合構造ばかりでなく、結合の自由エネルギー値を直接計算して、実験値と比較することを目指す。結合の自由エネルギーが直接計算できるようになれば、創薬設計に大きく貢献できることになる。
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Research Products
(23 results)