2015 Fiscal Year Annual Research Report
海底圧力計アレー観測による海洋/固体地球システム現象の解明
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25247074
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
深尾 良夫 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 特任上席研究員 (10022708)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 海底水圧計 / 海底加速度計 / 津波 / 津波地震 / 海洋内部潮汐 / 海洋内部ボア / 海洋重力波 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初計画 1.青ヶ島東方沖海底に1年間設置した海底圧力計アレー10台と広帯域海底地震計+海底微差圧計1セットの引き上げ、データ回収、鳥島はるか沖への再設置を行う。2.熊野灘沖のDONET圧力計データから海洋内部潮汐波を検出するアルゴリズムを確立し、実際に検出を試みる。3.上記アルゴリズムを青ヶ島東方沖海底データに適用し、ここでも海洋内部潮汐波の抽出を試みる。4.新型海底加速度計を用いて検出した宮城県沖海底地滑りイベント群に関する論文を完成させる。5.次年度初頭における観測装置の最終回収に向けてJAMSTEC調査船公募利用を申請する。 計画に沿った研究業績(下記項目は上記項目にそれぞれ対応)1.成功裏に全装置の引き上げ・データ回収・再設置を行った。但し再設置にあたって1台海底からの切り離し装置に不具合が見つかったため、1点は広帯域海底地震計+海底微差圧計1セットのみとした。2.アルゴリズムを完成し、実際に熊野灘沖DONETデータを解析して内部潮汐波を検出した。3.青ヶ島東方沖では更に精度よく内部潮汐波を検出し、海洋流シミュレーショングループによる計算結果と比較し驚くべき良い一致を得た。この結果をもとに、同グループとの共同研究が生まれつつある。4.検出したのは地滑りではなく、海溝斜面を駆け上るInternal boresであることが判明。この意外な結果をJGR-Oceansに投稿し、査読過程を経て今、in press の状態にある。5.JAMSTEC調査船利用の申請は採択され、2016年6月後半に新青丸で全装置とデータの回収を行う予定 その他.2015年5月2日に発生した鳥島津波地震の地震波と津波が100-kmの近距離で記録された。これは津波地震の海底アレー記録としては世界初のものである。記録の初期的なアレー解析結果を2015年AGU大会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自己評価としては(1)と(2)の間と判断する。「研究実績の概要」にまとめたように、当初計画に挙げた5項目の目標は全て達成した。但し4項目目については、2011年東北沖地震の震源域の海底下で起きている現象を検出することが目的であったが、検出された現象は予想外の海洋物理現象であった。この現象は海洋物理学的に大きな意義を持つものであったため観測結果はJGR-Oceansに掲載されることになった。当初目的とは異なる発見であったが、大きな成果であったと自己評価する。それ以外にも偶然ではあったが、観測アレーから近距離で発生した津波地震の地震波と津波をアレーで記録するという稀有のチャンスを得た。これは世界的にも珍しい記録であり、当初計画外と言えども大成果として挙げることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は研究計画最後の年にあたり、論文発表を意識しつつ研究を進める。具体的には、(1)これまで1年間鳥島はるか東方沖海底に設置していた測器を全て回収し、(2)回収したデータの処理と初期解析を行い、(3)前年度青ヶ島東方沖海底で検出された内部潮汐波がここでも発生しているかどうかを確認し、(4)2015年5月の鳥島津波地震の記録解析を更に進める。また(5)アレー近傍で発生している筈の逆断層微小地震群を解析しその異常性を抽出し、(6)2015年5月の小笠原超巨大深発地震の記録の解析を実施し、(7)長周期海洋重力波の波源域の探索を継続する。特に観測装置の回収は6月に設定されており、それからのデータの処理と解析が全て年度内に完了するわけではないので、優先順位をつけて研究を進める。また、本科研費の一部を用いて改造した超深度流速計の別途予算による回収が9月に予定されている。この改造によって、これまでは2週間しか稼働させることができなかった流速計を1年間以上稼働させることが可能となった。これを前回と同じく2011年東北沖地震震源域海底の同じ地点に平成27年9月設置したが、これを平成28年9月に回収する予定となっている。このデータを解析することにより、我々の発見した海溝斜面を駆け上る内部ボアの実態がより鮮明になると期待される。
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Research Products
(7 results)