2013 Fiscal Year Annual Research Report
氷生成過程のその場観察・構造解析のための極低温超高真空透過型電子顕微鏡の開発
Project/Area Number |
25247086
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
香内 晃 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (60161866)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日高 宏 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (00400010)
羽馬 哲也 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (20579172)
大場 康弘 北海道大学, 低温科学研究所, 特任助教 (00507535)
千貝 健 北海道大学, 低温科学研究所, 技術専門職員 (60601309)
|
Project Period (FY) |
2013-10-21 – 2016-03-31
|
Keywords | アモルファス氷 / 結晶成長 / 電子顕微鏡 / メゾスコピック系 / 冷凍機 |
Research Abstract |
アモルファス氷は星間分子雲や太陽系外縁部の主要固体物質で,その生成機構,構造,物性の理解は,太陽系物質や彗星の進化を理解する上で決定的に重要である.しかし,実験的な困難さゆえ,生成機構や構造はこれまでほとんど理解されていない.そこで,本研究計画では,透過型電子顕微鏡(TEM)の鏡体内で制御された条件(温度,凝縮速度,基板の種類・構造)で氷を作製し,かつ種々のプロセス(紫外線・イオン照射等)を与えることのできる極低温超高真空透過型電子顕微鏡を開発する.それを用いて,アモルファス氷の生成過程のその場観察ならびに氷の構造(ミクロからマクロ)・化学結合状態の解析をおこなう. このために,現有の超高真空TEMに,本研究で作製するパルスチューブ型冷凍機を用いた冷却システムを取り付け,温度可変(10-300K)で長時間の冷却が可能なシステムとする.パルスチューブ型He冷凍機はGM型He冷凍機と比較して振動は1/10程度と小さいが,それでも数μm程度の振動があるので,この振動をTEMホルダーに伝えないための工夫を施す.本年度は,低振動型のパルスチューブ型He冷凍機を用いた超高真空TEM用の冷却システムを設計し,一部部品を製作した. 基本的な設計はほぼ終了し,それに基づいて以下の部品を製作した.重量のある架台(パルスチューブ型冷凍機設置用,パルスチューブ型冷凍機のモーター固定用,真空チャンバー固定用),パルスチューブ冷凍機用40K熱シールド,真空チャンバー,真空チャンバーと冷凍機の間の振動を除去するための特殊ベローズ,TEM用ホルダー( 8Kの無酸素銅棒が中心にあり,その周りを50Kの熱シールドが取り囲む.無酸素銅棒にはヒーターと温度センサーが取り付けられている).
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
基本的設計は,交付申請書に記載した通り,おおむね実施できた.個々の部品の詳細設計については,大部分の部品で終了した.しかし,一部ながら,予定通りに進まない点もあった.除振のために二段目銅ブロックとTEMホルダーをつなぐ「極細金属線を多数束ね,熱伝導を極力保ったままで除振を行う」は,大きさが小さいことと,予定していた超高純度(99.9999%)で細い(直径0.1mm程度)のアルミニウム線の入手が困難であり,そのため設計を変更する必要に迫られたが,まだ完了していない. 製作に関しては,上記「研究実績の概要」に記したとおり,ほぼ計画通りに物品(部品)の製作を完了した. 以上のことから,研究は,ほぼ当初の計画通りに進展していると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
基本的には,当初の計画通り研究を推進していくことで,研究目的を達成できると考えている.平成26年度には,パルスチューブ型冷凍機と一段目の銅ブロックをつなぐ極細金属線を多数束ねた高熱伝導線およびその外側を覆う(真空で)振動を伝えにくいベローズを作製する.同様に,一段目の銅ブロックとTEMホルダーをつなぐ部品も作製する.全ての部品の製作が完了した時点で,システムを組み上げる.その後,冷凍機による冷却試験をおこない,到達温度と振動を実際に計測する.平成27年度は引き続き総合的な試験をおこない,システムとしての性能を評価する. 上記「現在までの達成度」に記したように,特殊材料が入手困難のため,部品の設計変更を迫られている箇所がある.これは,素材メーカーがかつて生産していた材料の生産から撤退していることが影響している.たとえば,超高純度の銅,アルミニウムなどである.この場合,材料の純度を99.9999%から99.9995%に落とすことで,若干熱伝導は悪くなるが,少し太めの線を使う(この場合,振動を伝えやすくなる問題が発生する)ことで,解決していきたいと考えている.
|