2013 Fiscal Year Annual Research Report
移行運動量をパラメータとする電子・分子衝突立体ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
25248002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 正彦 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (80241579)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 化学物理 / 原子・分子物理 / 電子線散乱 |
Research Abstract |
電子が分子に衝突する時、分子軸の向きが入射電子ビーム軸と垂直か平行か、あるいは遠方衝突か近接衝突に依存して衝突の起こる確率や衝突の物理的内容が異なるのではないだろうか。本研究の目的は、そうした極めて基礎的な問いに初めて応える、電子・分子衝突の立体ダイナミクスという新しい研究分野の開拓である。具体的には、研究代表者らが世界に先駆けて開発した(e,2e+M)分光を展開し、分子配向と衝突径数の二つをパラメータとして電子衝撃イオン化断面積を測定する「電子・分子衝突の反応顕微分光法」として確立する。 上記の目的に向けて、本研究計画初年度である平成25年度は、まず荷電粒子トラジェクトリー・シミュレーションにより(e,2e+M)反応の検出効率の精査を行った。その結果、当初予定していた(電子・電子・解離イオン)三重同時計測に比べて、解離イオンの運動量精密測定を前提とする(電子・解離イオン)二重同時計測の方が桁違いに大きな信号強度が期待できることを見出した。この知見を踏まえ、真空チェンバーと電子エネルギー分析器の設計と製作を行うと共に、イオン分析器の新規設計を進めた。また真空チェンバーの排気ポンプとして市販のターボ分子ポンプを購入した。 以上の成果を踏まえて、試作ないしは開発を要するイオン分析器、超音速分子線源、およびパルス電子銃を次年度に整備し、「電子・分子衝突の反応顕微分光装置」をシステムとして完成させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における最大の実験的困難は、信号強度が極めて弱いであろうことである。これに関しては、「研究実績の概要」欄で記したように、荷電粒子トラジェクトリー・シミュレーションによる(e,2e+M)反応の検出効率の精査を行った。その結果、幸いにも、当初予定していた(電子・電子・解離イオン)三重同時計測に比べて桁違いに大きな信号強度を与えると期待されるプロトコルを新規に見出した。さらに、このプロトコルに最も適するように電子エネルギー分析器を新規開発する際に設計を行った。これらは、本研究が目的とする「電子・分子衝突の反応顕微分光法」の確立のための実験技術的基盤をなすものである。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の成果を踏まえて、次年度たる平成26年度は、試作ないしは開発を要するイオン分析器、超音速分子線源、およびパルス電子銃を整備すると共に、本研究に特化した電子検出用大型二次元検出器を購入し、「電子・分子衝突の反応顕微分光装置」をシステムとして完成させる予定である。ここで、飛行時間法を基礎とするレンズ系と研究代表者が有するイオン用二次元検出器を高度に組み合わせてイオン分析器を構築し、また研究代表者らが製作経験を豊富に有するcw型熱電子電子銃の偏向板にパルス電圧を印加して数ナノ秒、100 kHzのパルス電子銃を開発する。 平成27年度では、水素分子等の単純に原子分子を標的とした予備的実験を重ねて、実験条件の最適化を図る。その後、目的とする「電子・分子衝突の反応顕微分光」実験を種々の分子を対象にして行っていく。
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Research Products
(29 results)