2015 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Large Susceptibility Materials by Liquid Crystalline Soft Matter
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25248021
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
菊池 裕嗣 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (50186201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 博紀 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (50432951)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 液晶 / ブルー相 / 電気光学効果 / Kerr効果 / ディスクリネーション / フラストレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
小さなインプットで大きなアウトプットを示す材料の開発は、将来の省エネルギー社会、高度情報化社会を支える基盤的技術として重要な意義をもつ。研究代表者らは、分子の自己組織や協同運動の科学に基づき、巨大感受率を示すソフトマター材料の開発を推進している。これまで、高分子安定化ブルー相と呼ばれる液晶系ソフトマターにおいて最高クラスの電気光学応答(Kerr効果)を広い温度範囲にわたり発現させることに成功し、次世代ディスプレイあるいは光学変調デバイスへの応用の道を切り開いた。本研究の目的は、高分子安定化ブルー相のさらなる性能向上を推し進めるとともに、これまでと異なる切り口・新しい原理に基づく巨大感受率材料の創出と実用化を目指す。 本年度は、高分子安定化ブルー相の安定化メカニズムの解明に直結する高分子の構造について放射光の超小角X回折の結果を解析して構造モデルを提案した。ブルー相は、分子の二重ねじれ構造を素構造とするO8+構造と構造欠陥であるディスクリネーションから成るO8-構造が重なり合った特殊な構造を有している。放射光の超小角X回折の結果、O8-の構造因子とよく合致する回折を得た。したがって、高分子安定化ブルー相の高分子はディスクリネーションに凝集した構造と結論できる。これらの結果を基に、液晶の二重ねじれ配列の秩序領域と高分子が凝集したディスクリネーションから構成される構造を高分子安定化ブルー相の構造として提案した。このモデルは、高分子安定化ブルー相でブルー相の温度範囲が低温側に広がる現象をよく説明できる。また、共焦点レーザ走査顕微鏡によりブルー相の格子構造の直接観察にも成功し、高分子安定化ブルー相構造が飛躍的に明確になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブルー相中で5~10wt%程度の高分子をin-situ重合で生成させるとブルー相の温度範囲が1℃程度から数10℃以上に劇的に拡大することが応募者らによって発見され、この手法が世界的にも広く使われるようになった。外国企業によって試作されたブルー相モードディスプレイも高分子安定化ブルー相を用いている。しかしながら、この安定化効果の本質は十分解明されているとは言えない。本年度は、高分子安定化ブルー相の安定化メカニズムの解明の根拠となる高分子の構造の解析を行った。種々のモノマーを用いて高分子安定化ブルー相を調製し、その構造を超小角X線の回折から評価した。その結果、高分子はブルー相のフラストレーションが原因で生じているディスクリネーションを埋めるように凝集していることが示唆された。この結果は、ブルー相が低温側に安定化される現象をよく説明でき、福田らによるシミュレーションともよく一致する。これらの結果は、高分子安定化ブルー相の物性や応用にとって極めて重要な知見であり、また、当初の研究計画にも目標としていた事項であり、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
高分子安定化ブルー相のKerr効果は、母液晶の誘電異方性に強く依存する。そのため、誘電異方性の大きな液晶化合物の開発とそのメカニズム解明に注力する。有極性分子からなる液体のKerr効果は、分子の双極子モーメントと分子複屈折の積に比例するので、分子の官能基の種類や位置、π共役、形状などを最適化すれば、ほぼ理論通り所望のKerr係数が得られる。しかしながら、液晶性ソフトマターの場合、分子同士の近距離の配列秩序がこれに大きく寄与し、上記のように単純ではない。特に、分子配列の相関因子の1次(g1)と2次(g2)が重要な役割を果たすことが予想される。現状では、これら相関因子と分子構造の関係は、ほとんど明らかになっていない。本研究では、ホスト液晶の等方相での誘電分散挙動の低温域への外挿やネマチック相での非線形光学測定などにより、分子配列の相関因子を評価し、分子構造との相関を明らかにする。この成果に基づき、大きなKerr係数を示す高分子安定化ブルー相の材料設計指針を得る。また、新規な材料への展開として、無機ナノシートの分散液体のKerr効果も検討する。この系は、相図上でネマチック相に近い等方相に相当し、転移前駆現象が顕著な領域に対応すると考えられる。サーモトロピック液晶と違ってこの系は濃度で誘起された状態であるため温度変化に対してはそれほど敏感でなく、比較的幅広い温度域で巨大Kerr効果が維持できると期待される。本研究は、この系による新たな巨大電気光学材料の創出を行う。
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Research Products
(18 results)