2014 Fiscal Year Annual Research Report
多分岐高分子を利用する高強度イオンゲルの開発・制御と環境調和型材料への展開研究
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25248027
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柴山 充弘 東京大学, 物性研究所, 教授 (00175390)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 健太 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (20432883)
酒井 崇匡 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70456151)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イオン液体 / イオンゲル / テトラベグゲル / 非プロトン性イオン液体 / プロトン性イオン液体 / 小角中性子散乱 / 動的光散乱 / 溶媒和 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、4分岐ポリエチレングリコール(Tetra-PEG)鎖を骨格とする均一網目を用いた高強度ハイドロゲル(溶媒:水)の開発・研究をイオン液体(IL)系に拡張し、高性能イオンゲルの創成を目指すことを目的としていた。平成26年度は、4分岐ポリエチレングリコール(テトラペグゲル)のゲル化反応速度論、網目欠陥制御と網目欠陥含有ゲル網目の構造解析、テトラペグイオンゲル高強力薄膜の開発と二酸化炭素分離能評価などを行った。以下に、その概要を述べる。 イオン液体(IL)は不揮発性や難燃性、熱的・化学的安定性等の特徴を有し、さらに、二酸化炭素等の酸性ガスを選択的に吸収する。多孔質材料にILを充填したIL支持膜 (SILM)は、圧力差によってILが漏出するという問題点が存在する。高分子でイオン液体をゲル化させたイオンゲル膜も研究が進んでいるが、その力学強度・耐熱性は未だ不足しており、幅広い温度・圧力下で利用できるゲルの開発が望まれていた。我々は最近、IL中において反応末端の異なる二種の4分岐ポリエチレングリコール(Tetra-PEG)を反応させることで、耐熱性・力学強度に優れた高強度イオンゲル(テトラペグイオンゲル)を開発することに成功した。さらに、水系において緩衝溶液法によるpH調節で反応を制御する方法を参考にし、プロトン性ILを緩衝剤とする非プロトン性IL中のゲル化機構を解析することで、プロトン性ILを用いた反応速度の制御法を確立した。この方法により強力薄膜を調製し、そのガス透過選択性および二酸化炭素吸収特性を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画であった、①イオン液体中でのTetra-PEGゲル化反応メカニズムとその精密制御、②中性子散乱実験を基軸としたイオンゲル中の高分子網目構造(ナノスケール構造)、③イオン液体中の高分子溶媒和とそれを支配する高分子-溶媒相互作用の抽出(ミクロスケール構造)、について、①のゲル化反応メカニズムとその精密制御と③の高分子-溶媒相互作用の研究は順調に進んでおり、予想以上の成果をあげている。②の中性子散乱実験を基軸としたイオンゲル中の高分子網目構造の研究については、いまだ重水素化4分岐ポリエチレングリコールの調製に成功していないため、平成27年度以降の懸案である。一方で、目的達成のため、以下のような関連研究を平行して行い、多くの成果を得た。(1)テトラペグハイドロゲルのゲル反応機構の速度論を解明、(2) 網目欠陥を制御したテトラペグハイドロゲルの調製と小角中性子散乱を用いた構造による構造と網目欠陥度(網目の反応率)の関係解明。(3)フェノール樹脂のゲル化反応過程の計算機実験による熱硬化性樹脂の不均一構造の制御の研究。これらを総合すると、現在までの研究達成度は約70%で、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初目標である、従来溶媒にはないILの特徴(蒸発しない、極限環境下でも失活しない、導電性、二酸化炭素の選択的溶解性など)を付加した全く新規のゲル材料を提案するために、我々が開発したプロトンイオン液体によるイオン液体系の緩衝溶液法を駆使して、より反応度の高い高強力イオンゲル薄膜の調製を目指す。そして、得られた膜の構造解析や力学強度試験、二酸化炭素分離試験を行うことで、分離膜のさらなる性能向上を実現する。一方、低誘電率溶媒中で高膨潤するゲルの開発とその構造解析、高角X線散乱および計算機実験によるセルロースのモデル系であるグルコースのイオン液体中での溶媒和構造の研究、などイオン液体中での高分子の物性解明という基礎学問的な観点からの研究を行い、イオン液体中における高分子溶液論の確立をめざす。
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Research Products
(18 results)