2014 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質単分子配置による分子コンビナート構築原理の確立
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25248038
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森井 孝 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (90222348)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 核酸関連化学 / タンパク質 / 単分子配置 / 酵素 / DNAナノテクノロジー / 人工代謝系 / 受容体 / クラスター効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内では細胞膜上において、特定の基質に結合する生体高分子(リセプター)が集積化することが知られており、このリセプターの集積化がシグナル伝達の制御に関わっていることが示唆されている。これまでの研究から、リセプターの集積化によって基質親和性や結合および解離速度が、集積化していない状態のものとは異なることが明らかになってきている。しかし、リセプターをナノメートルの精度で制御して配置することが技術的に困難なため、厳密に数や距離を制御してリセプターを集積化した場合の基質親和性や基質選択性の変化については、実験的な確認が困難だった。 DNAオリガミは、DNAが特定の組み合わせで塩基対を形成するという性質を利用して作製されるナノ構造体である。多彩な形状のDNAオリガミを容易に設計・作製することができ、その上に様々な生体高分子を位置特異的に配置することができる。また、RevペプチドとRev Response Element (RRE) RNAの複合体を基本骨格とし、様々な基質に対する蛍光性RNPセンサーが作製可能である。蛍光性RNPセンサーはさらに、RevペプチドのC末端とRNAの3’末端を共有結合化することで、低濃度領域においても用いることができる共有結合化RNP (c-RNP)センサーへと改変できる。これらの技術を応用して、ATP結合性の蛍光性cRNPセンサーをDNAオリガミ上に集積化させ、ATPやその誘導体に対する親和性の変化を評価したところ、集積化したセンサー数の増大に伴って基質親和性が低下するということが明らかになった。加えて、基質親和性の低下は、集積化したセンサーへの基質結合速度定数の減少に主として支配されることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リセプターを集積化させた際に、個々のリセプターの基質結合能がどのように変化するかは、生物が細胞外シグナルをどのように認知するかを明らかにする上で重要である。それとともに、リセプターが集積化されることにより、そのリガンド濃度が局所的に変化することが考えられる。これらを明らかにするために、DNAナノ構造体上にさまざまな集積度でリセプターを配置し、それぞれの基質結合挙動を解析する系を構築した。この際にリセプターとしてATP結合性蛍光センサーを利用することで、それぞれの集積状態にあるリセプターの基質結合挙動を平衡論的・速度論的に解析した。共有結合化ATP結合性RNPセンサー(c-RNP)をDNAオリガミ上に集積化し、リセプターの集積化と基質親和性の変化を調べた。集積化するc-RNPの数を4個、9個、16個、25個と増加させるに従い、ATPとの平衡解離定数は増加する、すなわち、リセプターの集積化によって基質親和性が低下することが明らかとなった。また、この親和性の変化は、集積化するc-RNPの数が増加するとともに基質結合速度が低下することに、主として支配されることがわかった。これらは、実際に集積化したリセプターを構築する事によってはじめて明らかになった知見であり、本研究で目的とする「受容体と酵素が共同して働く分子コンビナート」を設計する上で、重要な知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で明らかになった知見をもとにして、DNAナノ構造体上に様々な集積度でNAD+リセプターを配置する事によって、同一構造体上に配置されたキシロース還元酵素(XR)とキシリトール脱水素酵素(XDH)による酵素反応がどのように変化するかを調べる。また、昨年度からの研究で開発した「特定の酵素をDNAナノ構造体上の設計した場所に配置するアダプター」、「特定の酵素をDNAナノ構造体上の設計した場所に共有結合によって配置するアダプター」を用いて、2種類の酵素を特定の距離に特定の分子数比で配置することが可能になった。この方法論を「リブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(RubisCO)の炭素固定反応を促進する反応場」の構築にも応用し、すでにGCN4アダプターを融合したG-RuBisCO、zSアダプターを融合したカーボニックアンヒドラーゼ(zS-CA)を合成し、それらの活性評価も行った。今後は、様々な様式でDNAナノ構造体上に配置したG-RuBisCOとzS-CAによる炭素固定反応を検証する。
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