2013 Fiscal Year Annual Research Report
共重合体の構造構築を基盤とした複合マテリアルの創製
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25248048
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松下 裕秀 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60157302)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 敦志 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00236241)
川口 大輔 九州大学, 分子システムデバイス国際リーダー教育センター, 准教授 (70362267)
野呂 篤史 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90377896)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ブロック共重合体 / モルフォロジー / ナノポーラス構造 / 準周期構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
25年度開始の当研究は、25年度からの繰り越しを経て、25、26年度の2年間で次のような成果を得ている。 1)ジブロック共重合体/金属塩ハイブリッドとナノポーラス構造:ポリスチレン(S)-ポリ2-ビニルピリジン(P)、およびS-ポリ4-ビニルピリジン(4P) の2種類のジブロック共重合体に塩化鉄をブレンドし、モルフォロジー形成に及ぼす異性体効果について調べた。その結果、金属塩とのブレンドのモルフォロジー転移は前者の方が急速に起こること、が明らかになった。また、これらのハイブリッド膜から超薄切片を作成し、水中への浸漬により塩を除去し、ポリビニルピリジンドメインに周期的な穴が開いたナノポーラス構造を得た。 2)ブロック共重合体/ホモポリマーブレンドとナノポーラス構造:ポリイソプレン(I)、S、Pを構成成分とするSPジブロック、S2Pスター、およびISPトリブロック共重合体をそれぞれ親ポリマーとし、Pと選択的に水素結合を形成するポリヒドロキシスチレン(H)とのブレンドを作製した。ブレンドから溶媒キャストによりバルク状態で規則構造を形成させた後、酢酸:メタノール=1:1混合溶媒中での浸漬によってHを除去しナノポーラス構造を得た。(1) ISP/HブレンドからのH除去によりジャイロイド骨格のナノポーラス構造が得られた。(2)SP/H 、S2P/Hブレンド の比較から後者の方が太い棒状のナノポアを示すことがわかった。(3)ISP/S ブレンドから、5配位の特徴をもつ新規棒状構造の発現を確認した。 3)ISPトリブロック共重合体二様ブレンドからの新規構造構築:全分子鎖長が等しく、末端鎖の長さが異なるISPトリブロック共重合体二様ブレンドの薄膜の構造を調べたところ、1)断面が四角形の柱状棒状構造、2)一つの成分が2種のミクロドメインに分かれ、5配位の特徴を持つ新規構造の発現を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の項目1、2より、ブロック共重合体/金属塩ハイブリッド、およびブロック共重合体/ホモポリマーブレンドから、化学的に工夫が必要であるものの、ブロック共重合体単体と同様に周期構造が得られ、添加物の量に応じてモルフォロジー転移することも判明した。さらに溶媒抽出という単純な手法で非共有結合を開裂させてゲスト物質を除去することで、規則構造中に周期的に穴が開いたナノポーラス構造が比較的容易に得られることが分かった。今後、3次元観察など詳細な構造解析は必要であるものの、ブロック共重合体の自己組織化能と超分子結合を組み合わせた分子設計/材料設計から得られた狙い通りの成果であり、研究の進捗状況としては計画通りに進行していると考えている。 また、ブロック共重合体/ホモポリマーブレンドとブロック共重合体二様ブレンドの双方から、5配位の配位数を持つ新規モルフォロジーが得られた。顕微鏡を用いた実空間観察と、X線散乱からの逆空間観察から、それらの結晶学的な単位格子は長方形型で、分子の長さをはるかに超えて200nm にも達する大きさを持つことが明らかになった。これは金属酸化物系で見られる構造の特徴と類似する一方で、高分子独特の大きな周期を与えるものとして注目される。金属酸化物系ではこの構造はpsedo-decagonal(PD) と呼ばれ、10回対称の準結晶近似結晶の位置づけである。 これらのことより、本研究で得られた新規構造は巨大な10回対称準結晶の近似構造とみなすことができる。これらの構造の出現は、研究開始初期には予想できなかったもので、達成状況としては期待を上回るものとみなしてよいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年間の成果を受け、27年度は次の二つの課題研究に焦点を当てて研究を進める。研究対象の共重合体中のP成分と水素結合を形成するH成分を含む共重合体とのブレンドから実質上の3相構造を作り、このうちの1相を除去してナノポーラス構造を構築する予定である。 1)ナノポア構造の設計と3次元観察:P 成分を短くしたISP 線状3元ブロック共重合体と、短いH 成分を含むポリ(4-フルオロスチレン-b-4-ヒドロキシスチレン)(FH)2元共重合体とのブレンドを作製し、キャスト法によってバルク膜を得る。ISP/FH の混合比により様々なモルフォロジーが得られるが、3成分線状共重合体の構造構築の特徴から、ダブルジャイロイド構造が比較的容易に得られると予想される。この薄膜を酢酸/メタノール混合溶媒に浸漬し、2元共重合体を洗浄除去する。例えばダブルジャイロイド構造から一つのネットワークを除去し、ジャイロイド骨格を持った3次元周期性のナノポーラス構造を構築する。構造観察はTEM/3DTEMとX線小角散乱法を組み合わせて3次元解析する。 2)新規準周期構造の探索:ISP星型共重合体では、組成比の偏りが大きくなければ断面が多角形タイリングとなる柱状のモルフォロジーが構築されやすい。P 成分を短くしたISP星型ブロック共重合体とHを短くしたポリ(4-ヒドロキシスチレン-b-ポリメチルメタクリレート)(HM) 二元共重合体ブレンドからは、P + H が大きな結合点になった I、S、M 3成分からの柱状相分離構造が得られると予想される。ここでもISP/HM ブレンドを作製し、溶媒中で水素結合を解離させると規則的な棒状のナノポアを持つ構造が構築できる。また、このISP/HM ブレンドでは、その組成比により、4配位構造と6配位構造の間に5配位構造の出現が予想される。上記10回対称準結晶構造実現に向けての探索をする。
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Research Products
(60 results)