2014 Fiscal Year Annual Research Report
ナノストライプパターニングによる薄膜流体潤滑技術の高度化に関する研究
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25249011
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
安藤 泰久 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00344169)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 晃司 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進プロセス研究部門, 研究グループ長 (30302392)
福田 めぐみ 日本工業大学, 工学部, 准教授 (00589765)
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Project Period (FY) |
2013-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 湿度 / 凝着力 / 吸着 / ナノ溝 / マイクロ溝 / AFM / 酸化度 |
Outline of Annual Research Achievements |
微小摺動試験装置を用いて、ナノパターンの低速摺動時の摩擦特性について検討を行った。ナノストライプを構成する材料としてAgとAuを組合せて、研磨によってナノ溝とマイクロ溝が混在するナノパターンを得た。ヘキサデカンを潤滑油として用いて、馴染み摺動を行った後に、荷重及び摩擦速度と摩擦力の関係を複数種類のパターン毎に測定した。その結果、ナノパターンのエリアを区切るマイクロスケールの溝から効果的にナノパターン上に潤滑油を供給することで、より低い摩擦係数が得られることが明らかになった。 AuとFeからなるナノストライプ構造を用いて、表面ナノ構造と材料特性が凝着力、摩擦特性に与える影響について、Au平滑面、Fe平滑面との比較を行った。相対湿度を10%から80%まで変化させてAFM測定を行った結果、Au平滑表面では水の吸着層の形成により、凝着力および摩擦力変化すること、Fe平滑面では凝着力と摩擦力がほとんど変化しないことが示された。Au-Feナノストライプの場合には、湿度を変化させてもAu上での凝着力は変化しない等、均一表面と異なる特性を有することが明らかになり、潤滑油の挙動を考える上での手がかりが得られた。 潤滑油の供給が十分でないとき、表面に吸着した分子の摩擦への影響を調べるため、材料の酸化度と有機シラン分子の吸着性の相関解明に取り組んだ。異なる酸化状態の銅基板を作製し、有機シラン分子による表面改質を行った。これらの基板の摩擦力をAFMで評価した結果、有機シラン処理する材料の酸化状態の違いによって、摩擦力を制御できることが明らかになった。 これらの検討を進める中で、潤滑状態の摩擦であっても、起動停止時や低速摺動時には潤滑が切れた状態で摩擦を検討する必要があることが明らかになった。そこで、無潤滑時のナノストライプ構造の摩擦特性についても、摩擦試験により検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
速度が低く荷重が高い潤滑油膜が保持されにくい条件において、ナノパターンの無い平面基板とナノパターンのある基板の摩擦特性を比較した。その結果、ナノパターンを有する表面では、どのパターンを用いても摩擦係数が0.13から0.2であったのに対し、ナノパターンの無い平面基板においては、0.2から0.3の摩擦係数となることが明らかになった。この結果から、ナノパターンの付与により、油溜まり効果が得られていることを確認した。 この検討を進めるに当たって、軟質金属を組み合わせたナノストライプ基板においても、ナノ溝を出現させる研磨条件を見いだし、さらに馴染み摩擦を行うことによってナノ溝の形状を調整することが可能になっている。さらに、マスクパターンの制御による検討も進め、潤滑特性への影響を明らかにしている。滑り出し摩擦の検討については、十分なデータは得られていないが、流体潤滑特性や潤滑油供給能力に関する検討という観点からは、計画通りに研究が進展している。 吸着分子膜の摩擦特性に関しては、ナノストライプ構造を形成する材料の表面エネルギーを制御することにより、摩擦を制御することを目的としている。今年度までの成果では、表面の酸化度を制御することにより潤滑剤分子の吸着性を制御出来ることを見いだし、平滑表面で得られたマクロな表面エネルギーでは議論しきれないナノストライプ構造特有の摩擦特性を示す可能性が示された。したがって、吸着分子膜の摩擦特性に関しても、計画通りに順調に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
低速摺動時の流体潤滑特性や接触面への潤滑油供給能力の検討に関して、摩擦係数の測定実験についてはこれまでも十分に検討進められているが、さらに今後はマイクロパターンの制御による効果、ナノ溝とマイクロ溝の効果の切り分けを中心に、引き続き摩擦測定を行うことにより検討を進め、新しい知見を得ることを目指す。 潤滑特性の検討において、今後中心となるのは、ナノ液体膜の粘度上昇の抑制効果の確認と油切れを起こすような条件での摩擦特性の調査である。前者については摩擦測定に加え、流体膜厚の測定とAFMによる表面形状の正確な測定が実験の中心となる。後者は当初の計画には無かったが、ナノパターンに対して直交方向に摩擦した時には、平方方向の摩擦と比較してナノ溝が再生しにくいことが明らかになりつつある。そこで、実用的な観点から、固体潤滑効果のある材料を組み合わせることで、そのような条件でも低摩擦を維持する方法について検討を進めることとした。 吸着分子膜の摩擦特性に関する検討では、表面エネルギー制御のため、自己組織化単分子膜技術を活用する。ナノストライプパターンの構成材料に異なる酸化状態材料を組み込み、有機シラン処理表面改質を行うとともに、末端基を変化させた際の摩擦特性変化について、ナノ領域(AFM)での特性とマクロ領域(摩擦試験機)での特性とを比較検討し、ナノストライプ構造特有の摩擦制御因子の洗い出しを行う。これらの結果をもとに摩擦特性に応じた表面修飾ナノパターン構造の設計指針を提案する予定である。
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