2014 Fiscal Year Annual Research Report
強風下における砕波気液界面を通しての運動量およびスカラの輸送機構の実験的解明
| Project/Area Number |
25249013
|
|---|
| Research Institution | Kyoto University |
|---|
Principal Investigator |
小森 悟 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60127082)
|
|---|
| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒瀬 良一 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70371622)
高垣 直尚 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00554221)
大西 領 国立研究開発法人海洋研究開発機構, その他部局等, その他 (30414361)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
| Keywords | 流体工学 / 輸送現象論 / 台風 / 気候変動 / 海洋工学 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究実施概要を以下に示す．
（１）高風速時の造波作成手法の確立，および，吹送距離が長い状態におけるCO2フラックス測定： 台風直下の高風速（40m/s）をも含む広い風速帯に対して運動量，物質および熱の輸送実験を行うため，京都大学工学研究科のシステムシミュレーションラボに設置済みの造波装置を取り付けた高速風洞水槽を用いて，吹送距離が約50mと長い海洋上での風波と同じスペクトル形状を有する非線形波の再現手法を確立した．また，大型風波水槽に取り付けたもう1つの造波装置を使用して，低風速の状態において吹送距離が1km以上と非常に長い海洋上での風波気液界面を通してのCO2フラックスの測定を行った．その結果，吹送距離が10m程度の場合と吹送距離が1km以上の場合では，風波気液界面を通してのCO2フラックスは変化しないことが明らかになった．
（２）強風下での熱フラックスの測定： 高風速風洞水槽を使用し，砕波を伴う高風速領域において風波気液界面を通しての熱の輸送機構の解明を試みた．その結果，風波気液界面を通してのCO2フラックスと同様に，風速20m/sを超える高風速域においては，顕熱輸送係数，潜熱輸送係数およびエンタルピ輸送係数の風速依存性が風速20m/s以下の通常の風速域と異なることが明らかになった．
（３）高風速域における物質輸送シミュレーション： Iwano et al. (2013, Tellus B)の提案した台風直下における物質輸送モデルを用いて，高風速域におけるCO2輸送量の推定を行い，全球規模での大気海洋間におけるCO2輸送量との比較を行った．その結果，高風速域におけるCO2輸送量は全球規模での大気海洋間におけるCO2輸送量に比べてわずかであり，台風などの熱帯性低気圧か全大気海洋間の炭素収支に及ぼす影響は現状では小さいことが明らかになった．
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大型風波水槽におけるCO2フラックス測定実験や高速風波水槽における熱フラックス測定実験は順調に実施された．一方で，平成26年9月までにループ法の開発を行った結果，不規則波造波装置の造波板から発生する雑音が想定以上にループ法を用いた造波に影響することがわかり，雑音の影響しない実験条件の選定のために5ヶ月間を要した．以上より，研究はおおむね順調に進展した．
|
| Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は，強風下での激しい砕波を伴う風波気液界面を通しての運動量，熱および物質の輸送機構に関する研究を実施する．概要は以下のとおりである．
（１）高風速下かつ吹送距離が長い状態における運動量フラックスの測定： 平成26年に作成した不規則波造波装置を現有の高速風洞水槽に取り付け，高風速下かつ吹送距離が約50mと長い海洋上での風波の再現実験を行い，台風下における運動量フラックスの測定実験を行う．
（２）大気海洋結合モデルによる台風直下の運動量・熱輸送シミュレーション： 平成24年度および平成26年度に提案した台風直下における運動量・熱輸送モデルを用いて，台風直下における運動量・熱輸送量の推定を行い，これらの運動量・熱輸送モデルが台風強度の予測に及ぼす影響について検討する．
|
