2016 Fiscal Year Annual Research Report
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25249022
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田中 信雄 首都大学東京, システムデザイン研究科, 名誉教授 (70305423)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 良司 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第一部機械技術グループ, 主任研究員 (60463030)
岩本 宏之 成蹊大学, 理工学部, 准教授 (90404938)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 絶対静粛空間 / エバネセント波 / 音響振動連成 |
Outline of Annual Research Achievements |
ロングダクトに代表される半開空間場においては、従来の定在波モードの概念が希薄となり、移動モードおよびエバネセントモードの二つが発現するため、場の記述に当たっては展開定理をどのように適用するのか、カットオン周波数前後では移動モードからエバネセントモードへどのように変遷するのか、などの基本問題に立ち返って考察した。さらに、試作したロングダクトを用いて実験を行い、解析解と実験結果との照合を通してその真偽を確認すると共に、エバネセントスピーカの実現に向けてダクトサイズとエバネセントモードとの関係を明らかにした。 さらに、窓ガラスを一面弾性壁とする直方体キャビティを対象として、静粛化を目的とする音響・振動制御実験を継続した。強連成場においては空間境界条件の存在が場の解析を困難なものにしているが、実験の観点からすれば音場ないしは振動場の片方の場での制御が双方の場の制御に繋がる利点がある。また、窓ガラス特有の支持により発現する内爆モードの抑制実験を通じて、これまで不明とされていた相乗制御効果の発生メカニズムを明らかにすることができた。 こもり音の本質的な解明を志向して、太鼓型直方体キャビティの固有値問題を継続した。双璧に存在する空間境界条件に関しては、クラスタ関数を導入することで対応に当たり特性方程式を導出すると共に、剛性および質量に関する直交条件式を得、それを基にモード方程式を記述することができた。さらに伝達マトリックス法の立場から強制応答解を求め、これと解析解との比較により解の有意性を立証した。 有限平板に無限平板の特性を移植すべく、平板の任意箇所に渦巻き型パワーフローを生成し、それより生成される音場解析を行った。この場合は進行波の位相速度を自在に操ることが可能で、これまでに明らかにしたエバネセント波を支配する三因子に加えて、パワーフロー制御が第四番目の因子になることを確証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
5年計画にあたる4年目を終え、本研究プロジェクトの狙いであるグローバル絶対静粛空間の創成に向けて新たな知見が得られつつあり、最終的には伝搬しない音を放射するエバネセント波スピーカの開発に向けて概ね順調に進捗している。本研究グループがこれまでに捕捉しているエバネセント波発生現象は、無限平板を曲げ波がコインシデンス周波数以下で伝搬する場合、ロングダクトにおいて外乱周波数がカットオン周波数以下である場合、音響構造連成場において固有値がカットオン周波数を下回る場合の三種類に加えて、有限平板に渦巻き型パワーフローを生成させた場合の四種類で発現することが明らかにされており、いずれの現象においても、基本的にはエバネセント波を生成する支配因子を能動的に制御することにより自在にエバネセント波を生成することができる。中でも当該研究で先行しているのはロングダクトをベースとする手法であり、カットオン周波数がダクト口径に逆比例するという特性に着目し、最低次カットオン周波数を極力高周波領域に移動させ、ダクト端面をダイポール駆動する基礎原理であり、現在その有意性の検証実験を行っている。さらに、一面が窓ガラスで構成される強連成キャビティを対象とする静粛化制御の実験を進めており、これまでも再三指摘しているように、強連成場の解析は難解を極めるものの、静粛性実現のための音響振動制御を講ずる際は、振動場ないしは音響場のいずれからアプローチすると双方の場に可制御性が成立するという知見は興味深い。さらに、これまで振動制御効果と音響制御効果の単純和では理解できなかった相乗効果現象も、窓ガラス特有の支持法で発現する内爆モードを抑制する過程でそのからくりが明らかにされたことも、グローバル絶対静粛空間の創成を追求する上で大きな成果であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
5年計画の最終年度を迎えるに当たり、「グローバル絶対静粛空間の創成」の集大成を目指す。とりわけ、伝搬しない音の生成に重点を置き、そのためのエバネセント波スピーカの具現化について努力を払う。その一つとして、ロングダクトの音場特性を考慮して一次カットオン周波数を高めるために必要なストローダクト口径、長さ、個数などをパラメータとする設計法開発に着手する。さらに実利性を鑑み、ショートダクトにおいてのエバネセント波生成法にアプローチすると共に、これに反射波除去制御法を適用することで、ショートダクトにロングダクトの特質を移植することによりエバネセント波生成法に向けて取り組む。ロングダクトからショートダクトへの推移は、エバネセント波を発生する無限平板から有限平板への推移への概念と呼応する。有限平板を対象とするパワーフロー制御法は、既に当該研究グループが確立しているのでエバネセント波の視点よりアプローチし直し、真エバネセント波の生成方法を確立したいと考えている。さらに、強連成場の静粛化手法の確立は、長い間自動車業界で未解決問題とされている「こもり音」対策の抜本的な解決に繋がる。本プロジェクト研究の成果の一つとして、振動制御ないしは音響制御の片方のアプローチにより強連成場の静粛性を追求できることを明らかにしているので、この視点より簡素にして効果的な「こもり音」対策を確立したい。また、研究遂行の過程で興味深い現象や新たな着想が得られた場合には、これまで進めてきた路線を変更し、柔軟なスタンスで当該研究を展開していきたいと考えている。さらに、音響分野ではトップクラスにあるアデレード大学(豪州)の研究グループとは交流を深めてきており、彼らの得意とする音響制御分野と首都大グループの得意とする振動音響分野をさらに融合させて、本質的な静粛化設計手法を確立したいと考えている。
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Research Products
(12 results)