2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25249024
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 輝夫 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (30251474)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マイクロハイドローリクス / ソフトアクチュエータ / マイクロ流体デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロハイドローリクスに基づいたソフトアクチュエータの構造解析シミュレーション手法を構築し、その基本動作メカニズムの解明に取り組んだ。前年度の実証実験により、大変形することが明らかであるため、超弾性モデルを用いて静的解析を行った。本解析の最大の特長は、アクチュエータ材料の2軸引張試験で実測した材料の応力-ひずみ関数を解析に組み込んだ点である。実測した2軸応力-ひずみデータに対してMooney-Rivlin の5次近似を用いてフィッティングすることにより、応力-ひずみ関数を得た。印加する圧力を10kPa から120 kPaの間で変化させながら解析を行ったところ、定性的にも定量的にも実証実験と一致する動作をシミュレーションで再現できた。 次に、アクチュエータの動作スピード向上を目指して、構造解析シミュレーションと実証実験の2つのアプローチからアクチュエータの改良を行った。その結果、流路の深さやシートの厚み等の寸法を変化させても効果が小さく、アクチュエータ表面に設けた微細な連続溝構造が効果的であることが分かった。溝構造を設けることで、同じ圧力に対する変位は約2倍になり、約70%の圧力で同じ変位を得られることから、電気浸透流ポンプの圧力特性を考慮すると、アクチュエータ動作スピードが上がることが示唆された。実際に、電気浸透流ポンプを内蔵した溝付アクチュエータの実証実験を行ったところ、従来は一回の動作に要する時間が90秒であったが、それが60秒まで大幅に短縮された。 一方、もう一つの重要な構成要素である制御回路系の開発も平行して実施した。埋め込み型電気浸透流ポンプを駆動するのに必要な55Vを出力可能で、さらにその出力をPWM制御できる小型電気回路系を開発した。電源として小型リチウムイオン電池を内蔵することで、4個の埋め込み型電気浸透流ポンプを同時に駆動することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は本年度、ほぼ計画どおり順調に進行した。本年度の目標に掲げた、構造解析シミュレーション手法の構築や、マイクロハイドローリックアクチュエータの動作スピードの向上、および制御回路系の開発は順調に進み、ほぼ達成された。ただ、作製したマイクロハイドローリックアクチュエータの性能評価について、やや不十分であった。動作メカニズム、変位量、動作スピードは実験や構造解析シミュレーションにより定量的に評価することができたが、発生力を評価することができなかった。発生力はアクチュエータの基本性能の一つであり、重要な評価項目であるため、次年度の実施項目とした。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに開発したマイクロハイドロ-リックアクチュエータのプロトタイプ、圧力発生源である埋め込み型電気浸透流ポンプ、およびその制御回路系の3要素を組み合わせた実証ロボットモデルの設計・製作に取り組む。 より実用に近い動作を目指して、歩行や遊泳等の動作につながる複雑で機能的な動きを、基本マイクロハイドロ-リックアクチュエータを組み合わせて設計し、圧力源と制御回路系を搭載したプロトタイプロボットの構築と実証に挑戦する。そのための大きな課題が、駆動液リザーバの実装である。これまでの単純構造アクチュエータは電気浸透流ポンプ駆動液中でのみの動作に限定されていたが、駆動液リザーバの実装を実施することで、水中あるいは空気中でも動作できるようになる。電源を含めた制御回路の内蔵と駆動液リザーバの実装により、マイクロハイドロ-リックアクチュエータあるいはマイクロハイドローリックロボットの自立/自律動作を実現する。 一方で、昨年度までに実施できなかったアクチュエータとしての性能評価として、発生力測定を実施する。電気浸透流ポンプから発生する圧力を利用してアクチュエータを変形させたときの発生力をロードセル等で測定し、マイクロハイドロ-リックアクチュエータの出力可能な力を評価する。また、消費電力や動作可能時間の評価も課題として残されている。長時間動作させ、内蔵電源で動作可能な時間を測定し、システムとしての消費電力量を見積もる。以上のアクチュエータとしての計測や評価を通して、本研究課題で提案するマイクロハイドロ-リックアクチュエータの仕様を明らかにする。
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Research Products
(2 results)