2013 Fiscal Year Annual Research Report
コヒーレント光ファイバ通信方式の伝送限界に関する研究
Project/Area Number |
25249038
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊池 和朗 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50134458)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 情報通信工学 / フォトニックネットワーク |
Research Abstract |
これまでコヒーレント光通信では,IQ軸を用いた多値直交振幅変調(QAM)と偏波軸を用いた偏波多重に基づく変調フォーマットが用いられてきた。これに対して本研究では,IQ軸の2自由度と偏波軸の2自由度を組み合わせ,四次元空間で多値信号を組み立てる方法を検討している。このような四次元変調方式は,偏波モードの直交性が保存される光ファイバ通信システムにおいて特に有効な方式と考えられる。 今年度はまず,各種の変調フォーマットパワー効率と周波数利用効率との関係について検討し,シャノン限界から導かれるパワー効率と周波数利用効の限界値を定量的に評価した。次に,四次元空間においてDP-QPSKと同一のパワー効率でありながら周波数利用効率がより高い,新しい変調方式を提案し,これがDP-QPSKに比べてシャノン限界に近づき得るものであることを確認した。さらに四次元空間だけでなく,周波数や空間などの直交軸を用いて次元数を拡張することより,周波数利用効率およびパワー効率の観点からより優れた変調方式が存在することを示した。 次に,四次元空間を含む多次元空間での復調法についても予備的検討を行い,変調方式によらない一般的な復調アルゴリズムを導ける見通しを得た。 また,四次元空間でDP-QPSK にセット分割を3回施すことによって生成された子信号集合を用いた,8 状態を有する4 次元トレリス符号化光変調方式(4D-TCM)を新たに提案した。この変調方式は最小自由距離を効率よく拡大できるため,非符号化PS-QPSK に比べて周波数利用効率を維持したまま,より高感度となり得ることをシミュレーションにより示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
DP-QPSKと同一のパワー効率でありながら,周波数利用効率がより高い新しい四次元変調方式を提案した。理論解析と計算機シミュレーションにより,この方式がDP-QPSKに比べてよりシャノン限界に近づくことが確認できた。このように四次元変調のメリットが示されたことは,次年度以降の実験的検証に向けて大きなステップとなった。 さらに四次元空間を用いたトレリス符号化変調方式を提案し,計算機シミュレーションにより受信感度が大幅に改善されることが示された。四次元変調方式の新しい展開の糸口が得られたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の理論的提案を受けて,実験的検証を進める予定である。第一に四次元空間を含む多次元空間での復調法についての検討を進め,変調方式によらない一般的な復調アルゴリズムを開発する。このアルゴリズムを実装して,実験的に多次元変調方式の有効性を実証する。ナイキストWDM信号を用いた変復調システムを構築し,スペクトル効率およびパワー効率の限界を追及する。 次に,四次元空間を用いたトレリス符号化変調方式についても,復調アルゴリズムの検討を行う。信号等化やキャリア位相推定アルゴリズムと干渉しない復調アルゴリズムを模索する。
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