2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25249049
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
斗内 政吉 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 教授 (40207593)
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Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2016-03-31
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Keywords | テラヘルツ波 / 狭帯域 / 周期分極反転 / チェレンコフ位相整合 |
Research Abstract |
25年度は、位相制御による周波数可変狭帯域時間領域テラヘルツ光源の開発を行った。これまでに、分極反転LiNbO3 結晶を用いてチェレンコフ位相整合を満たす方向よりテラヘルツ波を取り出すことにより、狭帯域時間領域テラヘルツ発生が可能であることを明らかにしてきた。しかしながら、発生するテラヘルツ波の周波数は分極反転周期でほぼ決まるため、周波数の大幅なチューニングが出来ず、かつ結晶自体が高価であるという欠点があった。これらの欠点を克服するため、分極反転していないLiNbO3 結晶に置き換え、入射レーザーパルスのビームパターンに周期を与えることで、テラヘルツ波発生が可能であることを実証した。 先ず、金属板に周期的にスリットを設けたシャドウマスクを作成し、LiNbO3 結晶に入射するレーザー光をシャドウマスクに通すことにより入射レーザーパルスに空間的な周期性をあたえ、反転分極結晶を用いたときと同様な狭帯域時間領域テラヘルツ発生に成功した。しかしながら、シャドウマスクでは、入射レーザービーム強度がスリットにより全体の半分となると言う欠点があった。これを改善するため、石英板の厚さを周期的に変調し、入射レーザーの位相を周期的に反転させる位相マスクを用いることを考案した。その結果、シャドウマスクを用いたときの約2倍の強度のテラヘルツ波発生を実現した。また位相マスクと結晶を分離し、位相マスクのパターンをシリンドリカルレンズを用いて結晶上に射影した。これにより、レンズの位置を変えるだけで結晶における入射レーザーの周期を変えることができ、大幅な周波集チューニングが可能となった。この機構により、周波数を0.4THzから1.2THz程度まで変化させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書の計画では、25年度は位相制御による周波数可変狭帯域時間領域テラヘルツ波光源開発とこれを利用した物性研究を行うことを予定していた。実際、研究実績の概要にも記したとおり、反転分極していないLiNbO3 結晶を用いた周波数可変狭帯域時間領域テラヘルツ光源の開発では、シャドウマスクおよび位相マスクを利用して入射ビームパターンをLiNb3結晶に投影し、かつレンズによりそのパターン周期を変化させることにより、目的とする光源開発に成功した。またこの様な狭帯域時間領域光源とテラヘルツ時間領域分光法を用いた超伝導光応答に関する実験を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に周波数可変狭帯域時間領域テラヘルツ光源の原理実証はほぼ終了した。さらに、性能向上させ、実際の物質やデバイスに応用するために、26年度は以下の様な取り組みを行う。 1)位相制御による周波数可変狭帯域時間領域テラヘルツ光源の開発:引き続き、高輝度化と狭帯域化について、シミュレーションによる検討と合わせて取り組む。最終的には、中心周波数制御300GHz-3THz、帯域幅10GHz程度の光源開発を試みる。 2)電子材料のテラヘルツ分光:強相関電子材料・超伝導体・ナノカーボンのテラヘルツ物性をより明らかにするとともに、ポンププローブ法を用いた、光・テラヘルツ波励起ダイナミック物性ならびに非線形テラヘルツ物性の解明に取り組み、光・テラヘルツ新機能の探索に力を入れる。さらに、同材料群とメタマテリアルを用いたセンシングチップの開発などに展開する。 3)高周波電子デバイス評価システムの開発:周波数可変狭帯域時間領域テラヘルツ光源を用いた高周波デバイス評価システムの開発に着手する。現在、サブテラヘルツの無線通信応用なども大きく期待されていおり、この試みの価値は大きい。まず、独自に作製・購入可能な、高温超伝導ジョセフソンデバイスならびにショットキーダイオードを用いて、システムの構築と、その評価をおこなう。
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