2014 Fiscal Year Annual Research Report
電子線ナノプロセスのマルチフィジックスシミュレーション
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25249052
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
安田 雅昭 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30264807)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小寺 正敏 大阪工業大学, 工学部, 教授 (40170279)
多田 和広 富山高等専門学校, 専攻科, 准教授 (90579731)
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Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2016-03-31
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Keywords | 電子ビーム / ナノプロセス / 分子動力学法 / モンテカルロ法 / マルチフィジックス / 計算物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の要素手法であるモンテカルロ法と分子動力学法の拡張と改良を昨年度から継続して実施した。モンテカルロ法では、結晶構造に依存して電子の平均自由行程を変調したモデルによる解析をさらに進め、入射時点での電子の浸入深さが反射電子像の結晶方位コントラストに大きく寄与すること、結晶方位コントラストの情報深さが非常に浅く、表面敏感なコントラストであることを示すことが出来た。また、絶縁物試料の帯電現象の解析では、シミュレーションの評価に用いる試料表面電位の測定装置の整備を行うとともに、空間電荷制限電流の効果をシミュレーションに導入することにより、試料内部の電界の高い部分での導電率が向上し、より実験値に近い試料電位を再現することが出来た。分子動力学法ではシリカ、シリコンカーバイド、有機高分子試料を対象に電子線照射場の解析に適したポテンシャル力場の導入を実施した。 さらに、モンテカルロ法と分子動力学法を融合したシミュレーションにより電子線ナノプロセスの多彩な物理現象や応用技術の解析を実施した。有機高分子試料を対象に電子照射による試料の収縮現象を解析し、電子照射エネルギーによる収縮率の違いを再現した。二層シリカや単層二次元シリコンカーバイド試料では電子照射エネルギーにより酸素原子や炭素原子がそれぞれ選択的に叩き出されることを示した。グラフェン試料では電子照射による欠陥形成による試料中の応力分布の変化を解析することが出来た。応用技術への適用としては、電子線リソグラフィにおけるパターンラフネスや近接効果の露光条件依存性を分子レベルで解析した。また、二次元系材料を中心に電子ビームによる加工や改質のシミュレーション解析を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の要素手法であるモンテカルロ法、分子動力学法の拡張と改良による解析、および、それらの融合シミュレーションにより、反射電子の結晶方位コントラスト、絶縁物試料の帯電現象、試料の照射損傷など多彩な物理現象を解析することが出来た。対象となる材料系についても、ナノカーボン、シリカ、シリコンカーバイド、有機高分子と広げることが出来た。また、応用技術についても、電子線リソグラフィや測長走査電子顕微鏡などの諸問題について解析を実施できた。 これらの成果は学会や著書により広く発表を行った。また、国際会議や研究会における招待講演の依頼や優秀ポスター賞の受賞などにより一定の評価が得られていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで開発したモンテカルロ法と分子動力学法を融合した手法により解析した多彩な物理現象についての複合解析(マルチフィジックスシミュレーション)を実施する。すなわち、電子線リソグラフィや電子線ナノ加工および走査電子顕微鏡観察におけるパターン形成、構造変化、電子信号発生などを対象に、それらに影響を及ぼす試料温度上昇、試料内応力発生、試料帯電、フォギング電子発生などの物理現象との同時解析を実施し、電子線励起の複合した物理現象の相関関係についての理論解析データを蓄積する。 また、本課題において開発したマルチフィジックスシミュレーションの広範な電子線ナノプロセス解析への応用展開の可能性を検討するため、燃料電池や振動発電デバイスなどのグリーンナノデバイスの加工・改質および評価プロセスに関連した現象のシミュレーション解析を実施する。具体的には燃料電池の電極触媒としてのカーボン材料上の白金ナノ粒子やカーボンナノチューブを利用した振動発電デバイスなどから簡単な系を想定し、電子線を用いた加工・改質および評価において想定しうる構造変化の理論解析を実施する。 同時に、前年度まで実施した電子線励起の多彩な物理現象と応用技術の解析について、論文発表を目指した補足データの追加解析を実施する。
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Research Products
(33 results)