2013 Fiscal Year Annual Research Report
不飽和土を内包する地盤力学への展開と巨大地震に対する地盤~土構造物の耐震性評価
Project/Area Number |
25249064
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野田 利弘 名古屋大学, 減災連携研究センター, 教授 (80262872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田代 むつみ 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00422759)
浅岡 顕 公益財団法人地震予知総合研究振興会, 地震防災調査研究部, 副首席主任研究員 (50093175)
中井 健太郎 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60402484)
山田 正太郎 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70346815)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地震防災 / 地震応答解析 / 不飽和土 / サクション / 閉封飽和域 / 液状化 / 締固め / 複合災害 |
Research Abstract |
①社会基盤施設の耐震性再評価と耐震強化技術の再検討(前申請課題における最終年度の課題の完遂) 人工島としては名古屋港ポートアイランドをはじめとする具体の社会基盤施設とともに,土構造物としては濃尾平野の代表的地層を模擬した軟弱地盤上の河川堤防について耐震性を評価した.既往の被害予測手法は地震時安定性評価に主眼が置かれ,地震後の長期継続する地盤変状を予測することはできない.また,粘性土層はすべて弾性体としてモデル化するため地盤変状を過小予測するだけでなく,実際の地震発生時に予測を超えた変状が発生して甚大な被害に繋がりかねない.特に重要構造物や軟弱地盤の耐震性評価の際には,既往の予測手法に加えて,本解析技術による評価も並行して実施することで,予測精度の向上とともに,被害の見落としを防ぐ役割を果たすことが可能となることを示した. ②空気~水~土骨格連成有限変形解析による「不飽和土ならではの挙動」の把握 密な砂の正のダイレイタンシーに着目し,初期飽和度が99.9%で事実上「飽和土」と見なされる密詰め砂供試体の側圧一定・非排水(・非排気)三軸試験のシミュレーションを実施した.背圧が不十分な場合は,間隙水圧が正から負へと転ずるあたりから空気の存在による体積膨張が顕著になるため,供試体は不飽和土として挙動して軸差応力の伸びが見られなくなることを示し,過圧密土では空気の存在が少量であっても力学挙動に大きな影響を与えることを指摘した.また,比較的単純な条件下において粘土地盤上の不飽和盛土の施工時・地震中・地震後の挙動を調べた結果,盛土下部の閉封飽和域の形成過程を再現するだけでなく,地震時に生じる粘土地盤の塑性圧縮に伴う過剰水圧の上昇によって,地震後には時間をかけて不飽和盛土内の水位が上昇することを新たに示した.こうした解析結果を手掛かりに,今後は詳細な解析断面や現地材料を想定した耐震性評価を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に基盤研究(S)の研究課題を完遂させ,同時にその成果を礎に,不飽和土を内包する地盤力学への展開を目指すことが目的である. 基盤研究(S)の研究課題については,名港ポートアイランドをはじめとする具体の社会基盤施設とともに,濃尾平野の代表的地層を模擬した軟弱地盤上の河川堤防の地震応答解析を実施した.抽出した耐震強化ポイントを踏まえて,従来の設計指針では十分に考慮されてこなかった粘性土の変状や地震後の変形挙動までも考慮にいれた耐震強化技術を検討・提案した.従来の対象を決めてから対象毎に使い分ける解析技術では十分に果たすことができず,「地盤に何が起こるかを教えてくれる」本解析技術でしか果たすことができない役割と位置づけを整理することができており,当初計画通りに完遂することができたと自己評価している. 一方,不飽和土に関しては,当初の室内試験が,建物の耐震化改修に伴って試験機設置とともに実施開始を次年度に予定変更したものの,比較的単純な条件下における静的/動的空気~水~土骨格連成有限変形解析を先行的に進め,不飽和土の特徴を解析的に捉えることに努めた.盛土施工時の閉封飽和域の形成過程の再現解析,不飽和浸透模型実験のシミュレーション,背圧の大きさが異なる密詰砂の三軸試験の数値シミュレーション等を実施し,①閉封飽和域では,地震時に生じる粘土地盤の塑性圧縮に伴う過剰水圧の上昇によって地震後には時間をかけて不飽和盛土内の水位が上昇すること,②密詰砂を低背圧下でせん断すると,初期に含まれるごく微量の空気の存在で体積膨張効果が顕著となって不飽和土化してしまい,力学挙動に大きな影響を与える,といった不飽和土ならではの全く新しい知見が得られており,既存の不飽和解析コードと比較したときの本解析コードの優位性も指摘することができている.以上から,当初の計画以上に進展していると自己評価している.
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Strategy for Future Research Activity |
①三軸試験機による不飽和砂・シルト供試体の静的および動的載荷試験の実施する.平成25年度は予定を変更して解析を先行的に実施したが,平成26年度は解析結果から得られた興味深い知見も踏まえて室内試験に力を入れて実施する.そこで,排気・排水条件を制御できる三軸試験機を整備して試験のノウハウを確保するとともに,不飽和土の力学特性に関するデータを蓄積する.特に液状化・締固め挙動に与える影響を把握するために,サクション程度,排水・排気条件の違い等を系統的に変えた繰返し載荷試験を実施する. ②空気~水~土骨格連成有限変形解析コードの検証と高度化を進める.供試体の要素試験を初期値・境界値問題と捉える立場で実施する解析との対比を通じて,三相系の解析手法・構成式の妥当性を検証する.構成式の改良が必要と判断した場合は,構成式自体にサクションの影響も考慮した構成式を拡張整備する. ③東日本大震災の被災事例を対象にした不飽和土構造物・埋立地の変形・崩壊メカニズムの解明を進める.提案解析コードの検証と高度化が順調に進んだ際は,東日本大震災における不飽和土構造物の被災事例の再現解析を先行して開始し,崩壊メカニズムの解明・検証と対策法の検討を試みる.事例としては,例えば以下が挙げられる.A)東日本大震災では,河川堤防や造成宅地が崩壊した.これらの土構造物は飽和度あるいはサクション程度の違いに応じて異なる挙動を示す.このため鳴瀬川などでの崩壊事例を検証しながら,崩壊メカニズムを明らかにする.B)浦安の埋立地における液状化による被災家屋では,その直下の地下水面との間に挟まれた不飽和域が本震時に飽和化し,余震でその領域が液状化したと考えられている.不飽和領域の飽和化は本震時またはその後余震までに,当該不飽和域まで水が移動したことを意味する.このメカニズムが妥当なのか,地盤の種別や状態を変更しながら解析的に解明する.
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