2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25249084
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
石田 潤一郎 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (80151372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 重敦 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (40321624)
小野 芳朗 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (50152541)
中川 理 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (60212081)
日向 進 京都美術工芸大学, 工芸学部, その他 (60111994)
三宅 拓也 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (40721361)
松下 迪生 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, その他部局等, 研究員 (50638880)
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Project Period (FY) |
2013-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 模型 / 博覧会 / 展示 / 海外 / 大名屋敷 / 国際情報交換 / ウィーン万国博覧会 |
Research Abstract |
本研究は、近代日本が博覧会という機会にどのように建築を展示してきたか、という面から、日本の建築文化の海外発信、および海外の建築文化の受容の様相をさぐろうとするものである。 採択が決まったのが10月であったため、平成25年度においては、1876年開催のウィーン万博に出展された日本建築の模型に関する調査に焦点を絞った。まず11月に国立公文書館、東京国立博物館に所蔵されているウィーン万博関連史料を収集し、建築関係出展物の全容を製作費に至るまで解明し、収集・搬送・展示・返却の流れを把握した。また出展模型の制作者である武蔵屋鎌吉について解明を進め、遺族の協力を得て、調査を進めている。 12月16日から22日まで、ウィーン世界博物館に保存されている建築模型および工作具等の調査と文献資料の閲覧をおこなった。また同博物館およびウィーン工科大学の研究者との研究交流について協議をおこなった。平成26年2月27日から3月9日まで、あらためてウィーン世界博物館での模型調査をおこなった。ここでは保存模型のうち、最大の大名屋敷模型について、精密な実測と写真撮影をおこない、また製作技法について分析した。帰国後、実測データに基づき、平面図・断面図の図化を進めた。 これらの成果の一部は、5月5日、6日にウィーン世界博物館の主催で開催される「大名屋敷」に関する国際シンポジウムに参加する清水重敦、日向進、および大学院生が発表する。 これらの研究成果を通して、明治政府が初めて本格的に参加した万国博覧会において「日本建築」をどのように海外に紹介しようとしたかを具体的に理解する手がかりができ、また模型製作技法の分析からは近世近代移行期の建築技術観を知ることができる。こうした知見を与える重要な文化財としての建築模型の実態を詳細に把握できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、以下の4項目の目的を設定した。①建築展示物インベントリー作成のための基礎的情報収集・整理、②ヨーロッパ所在の建築展示物の現存状況調査、③国内所在の建築展示物の現存状況調査、④関連研究の実施と研究会の開催。 このうち、①については明治期の大型博覧会(万国博、および日英博)については、史料調査を進めており、ウィーン万博については細目まで解明できている。②については、ウィーン世界博物館所蔵にかかる出展物について精細な調査を遂行した。③については、①と連動して調査に着手した。④については、同時代の建築モニュメントに関する理念の一端を解明し、さらに26年5月にウィーン世界博物館が主催する国際シンポジウムに参加する準備をすすめている。 追加採択であったために半年間の成果となり、成果物のとりまとめは次年度にかかる部分も多いが、具体的な作例に即した調査分析と共同研究体制の構築という点では所期の目的を達成したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度においては、ウィーン世界博物館所蔵模型について仕上げ材料についての非破壊分析調査をおこない、最終的な研究結果をとりまとめ、該地の研究者とも連携しつつ、調査報告書として研究成果を発表する。あわせて他のヨーロッパに保存される建築展示物と関連文献についての所在調査を進める。まずオランダ・ライデン民族学博物館の調査をおこなう。日本国内に所在する展示物、文献についてのインベントリーづくりを進め、所蔵先ごとにデータベースとして共有化を進める。これらの事業については、各方面から協力を得る体制が不可欠であり、調査成果の報告と連動して研究会を開催し、情報の交換を進めつつ、研究体制の検証をおこなう。 平成27年度以降はインベントリー作成の成果を踏まえて、調査対象事例を増やしつつ、日本の近代建築、あるいは東西交流の歴史的展開のなかに位置づけるべく、幅広い研究交流の場を設定していく。
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