2013 Fiscal Year Annual Research Report
水素・酸素を利用した純チタン焼結材の高強靭化ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
25249102
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
近藤 勝義 大阪大学, 接合科学研究所, 教授 (50345138)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
砂田 聡 富山大学, その他の研究科, 教授 (00206575)
梅田 純子 大阪大学, 接合科学研究所, 助教 (50345162)
笹瀬 雅人 公益財団法人若狭湾エネルギー研究センター, その他部局等, 研究員 (60359239)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 粉末冶金 / 純チタン / 相変態 / 残留水素 / 加工熱処理 / 集合組織 / 変形双晶 / ヤング率 |
Research Abstract |
TiH2粉末を出発原料とした微量水素を含む純Ti焼結押出材を対象に,相変態過程での集合組織形成に及ぼす水素の影響を解明すると共に,加工・熱処理による純Ti焼結材のインプロセス組織構造制御法を構築した.先ず,焼結温度を調整することでTi焼結材に残存する水素量を制御した上で,熱間押出加工の適用により,例えば,水素含有量:0.067 wt.%では,JIS 4種相当の強度特性(0.2%YS:523 MPa,UTS:702 MPa,破断伸び:27.1%)および疲労強度(480 MPa)を示した.他方,1173 Kおよび1073 Kでの脱水素・焼結処理(水素量0.15 wt.%,0.33 wt.%)を施した押出材は,押出方向と平行に繊維状に配列したB/T-texture,六方晶格子のc軸が押出方向と平行に配列した〈0001〉集合組織を有し,2~3 μm程度の微細な結晶粒組織を呈した.その結果,1173K焼結材では結晶粒微細化によって26 MPaの0.2%YS増加が,1073 K焼結材では結晶粒微細化に加えて集合組織変化によるヤング率増加によって同187 MPaの増加を確認した.一方,伸びは前者が29.2%,後者が27.6%であり,顕著な差異はなく,十分な延性を示した.なお,変形双晶が生じ易いことから10%程度の低延性である〈0001〉集合組織を有していたにもかかわらず,1073 K焼結押出材が大きな破断伸びを示した要因は,残存水素によってTi結晶粒を分断するように析出した水素化物相(δ-TiHX)が変形双晶の局所的発生とその進展・粗大化を抑制し,試料全体に大きな均一変形が生じるためであることがわかった.また,このような特異な集合組織形成は,押出加工時に水素がβ相安定化因子として作用することでTiのβ-transus温度が低下し,結果としてβ単相域,もしくはα+β共存域からの加工が安定化することに起因することを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述の通り,水素化物相(δ-TiHX)が変形双晶の局所的発生と進展を抑制することを明らかにしたが,本課題は平成26年度に実施する内容であったことから当初の計画上の進展があり,しかも,本結果を元に,加工・熱処理による純Ti焼結押出材の相変態挙動に及ぼす微量水素の影響を定量的に解明できるといった成果が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
3次元アトムプローブ(3DAP),微小部XRD回折,高分解能透過電子顕微鏡(HR-TEM)等を用いた微視的構造解析により,Ti結晶内に固溶/存在する軽元素(水素・酸素・窒素)の振る舞いを解明し,水素/酸素・窒素含有純Ti焼結材において,強度-延性バランスを従来材より逸脱した特異性能を発現する新たな純Ti材料の創製を試みる.他方,電気化学的知見から固溶酸素/窒素原子がTi材の最表面電位および不動態膜の形成機構に及ぼす影響を明らかにし,Ti焼結材における超高耐腐食性の発現に資する軽元素の適正含有率を提案・実証する.
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