2014 Fiscal Year Annual Research Report
ダイナミック構造変化を利用した高強度・高延性ナノ結晶合金の創製
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25249103
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
山崎 徹 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30137252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 大樹 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00335192)
藤田 和孝 宇部工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10156862)
網谷 健児 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (30463798)
三浦 永理 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70315258)
早乙女 康典 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (90143198)
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Project Period (FY) |
2013-10-21 – 2017-03-31
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Keywords | 電解析出 / Ni-W合金 / ナノ結晶 / アモルファス / 加工硬化 / 放射光 / マイクロビーム |
Outline of Annual Research Achievements |
アモルファスまたはナノ結晶合金は、一般に、塑性変形伸びがほとんど得られない脆性材料である。しかしながら、本研究グループで開発したアモルファス/ナノ結晶の複合組織を有する電析Ni-W合金は、引張試験条件下において、2~3 GPaの高い破断強度とともに、数%の塑性伸びを発現した。Ni-W合金の組織は合金中のW含有量に依存し、14 at.%W以下ではナノ結晶単相、20 at.%W以上ではアモルファス単相となる。それらの中間の14~20 at.%では、W含有量が低いとナノ結晶が多く、W含有量が増加するとアモルファスが増加するナノ結晶/アモルファス二相組織となることが明らかとなった。本研究では、電析条件の制御によりW含有量を変化させ、ナノ結晶相/アモルファス相の比率を変えることによって、機械的性質がどのように変化するかを調べた。 電析浴は硫酸ニッケルおよびタングステン酸ナトリウムを主成分とし、電解浴中のNiイオン濃度を0.048~0.096mol/Lの範囲で増加させ、合金中のW含有量を20~14.9 at.%まで変化させた。TEM観察の結果、Ni-14.9 at.%W合金はほぼナノ結晶単相に近く、Ni-20.0 at.W合金はアモルファス単相であった。これらの試料は、ほとんど塑性伸びが得られなかった。Ni-15.5~18.2 at.%W合金ではナノ結晶/アモルファス二相状態であり、W含有量が多いほどアモルファス相の割合は増加し、ヤング率は徐々に増加した。ナノ結晶粒径はアモルファス相の割合によりほとんど変化せず5~6 nm程度であり、ナノ結晶の数密度が主に変化したと考えられる。大きな塑性伸びが得られた試料はW含有量が比較的少なく、ナノ結晶の割合が6~8割程度の時であった。Ni-15.5 at.%W合金においては最大7%弱の塑性伸びが得られ、比較的大きな加工硬化指数を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの研究により、電解析出法により作製したNi-W合金は、塑性変形中にはナノ結晶/アモルファス界面においてアモルファスの結晶化が生じることが明らかとされた。さらに、アモルファス相とナノ結晶相の比率は、W含有量によって変化でき、W含有量の減少するほどナノ結晶相の比率が増加するとともに。大きな塑性変形伸びが観察されることが明らかとなった。この原因として、塑性変形誘起によるナノ結晶粒成長により逆Hall-Petch則による加工硬化が生じていると考えられることから、ナノ結晶の数密度が高く、界面が多いNi-15.5at%W合金において高い加工硬化能を示し、大きな塑性伸びが得られたと考えられる。このように、転移論には依らない新しいメカニズムによる加工硬化現象を利用することにより、引張破断強度が、2~3 GPa級の硬質材料でも大きな塑性伸びを実現できたことは、従来の研究でも報告がなく、次世代の高強度材料の開発指針が得られたといえる。 この理論を応用して、脆性材料として問題のあった金属ガラスの高延性化についても試みた。Zr-Cu-Ni-Al系金属ガラスは高強度,高靭性の優れた機械的特性を有するが塑性変形能に乏しく、局所的なせん断変形により脆性的に破壊する。本研究室では、Zr含有量が65 at%以上のZr-Cu-Ni-Al系合金にAuを3 at%含有させた金属ガラス合金では,過冷却液体中に準結晶相(I相)が析出するようになり,塑性変形中に形成されたせん断帯内部で動的にI相が過冷却液体粘度を上昇させ,塑性変形能が改善されることを明らかにした。さらに、これらZr-Cu-Ni-Al-Au系金属ガラスにHPT強加工を施し,アモルファス相中におけるナノ準結晶の高密度分散を試み、引張破断までの塑性変形伸びの改善を確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の研究成果により、アモルファス/ナノ結晶複合組織を有するNi-W合金において、塑性変形誘起によるナノ結晶粒成長により逆Hall-Petch則による加工硬化が生じ、引張破断強度が、2~3 GPa級の硬質材料でも大きな塑性伸びを実現できたことは、従来の研究でも報告がなく、次世代の高強度材料の開発指針が得られたといえる。しかしながら、このような塑性変形誘起のナノ結晶粒成長を最大限に発現させるためには、ナノ結晶粒成長の熱安定性を制御することが必要である。すなわち、ナノ結晶粒の熱安定性が低すぎると、常温で保持しておくだけでナノ結晶粒成長が進行し、経時変化による材料の脆化を引き起こす可能性がある。一方、ナノ結晶粒の熱安定性を高くしすぎると、塑性変形誘起によるナノ結晶粒成長は生じがたくなり、大きな延性の発現は期待できない。このような材料特性を精密に調節するため、電析Ni-W合金作製時に、電解浴中に窒素ガスバブリング処理することにより、合金中の窒素含有濃度を調整し、ナノ結晶粒成長の変形温度依存性を制御する。これまでの予備実験では、窒素ガスバブリング処理によりNi-W合金中のアモルファス相の結晶化温度は大きく高温度側に移動することが確認されており、これが塑性変形誘起のナノ結晶粒成長にも大きく影響すると考えられる。さらに、電析中にアルゴンガスバブリング処理することにより、電析Ni-W合金中に含まれる酸素、窒素濃度は減少し、組織の熱安定性は大きく低下することから、これらの処理を通して、最適の高強度・高延性を有するアモルファス/ナノ結晶複合合金の開発を目指す。同様に、金属ガラスにおいても、合金組成を制御することにより、ナノ準結晶粒成長の熱安定性に注目し、高強度と高延性を同時に発現できる合金の開発を目指す。
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Research Products
(21 results)