2014 Fiscal Year Annual Research Report
新規熱化学プロセスによる木質バイオマスからの各種モノマーの選択的製造
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25249109
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前 一廣 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70192325)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 功 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20346092)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | バイオマス / 熱化学変換 / ヒドロキシメチルフルフラール / 糖 / 固体酸触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は木質バイオマス構成成分からのフルフラール回収と、糖類からのHMFへの接触分解について検討した。まず、キシランからフルフラールへ至る分解挙動を追跡し、各反応過程での酸濃度や温度の影響を検討した。水蒸気での加水分解では生成物は確認されなかったが、これはキシロースより高分子量の生成物が水蒸気に同伴されず回収できなかったためである。一方、液相の蒸留水による水熱処理ではオリゴ糖以上の多糖、硫酸添加条件ではキシロースが主生成物であることが明らかになった。種々の反応条件より、150℃、硫酸0.1 mol/Lの条件では、生成液中にはフルフラールと前駆体のみしか存在しないので、フルフラールのみを選択的に抽出できれば収率27.7%から大きく増加できる可能性が示唆された。 他方、糖類からHMFの転換については、2種類の酸点をもつ固体酸触媒としてゼオライトを採用し、性能や構造の違う9種類のものを使用した。HS-341(弱酸性)・HS-320(弱塩基性)・HS-500(強塩基性)の触媒を用いて80℃の低温条件下での実験を行った際のフルクトース収率について、HS-500以外の触媒では、フルクトースはほとんど得られなかった。HS-500についても、ある程度フルクトースは得られているものの、120℃の条件に比べて収率は低下していた。しかし、フミンの生成が抑えられていることで選択率は向上しており、触媒充填量1.0 gの場合、120℃では約60%であったが80℃では約80%となっていた。よってグルコースを異性化させフルクトースを高収率・高選択率で生成するためには、低温条件かつ低SiO2/Al2O3比(強ルイス酸性)・強塩基性の触媒を用いることが望ましいことが示唆された。また、フルクトースからHMFを高収率で生成するためには高温・低酸性条件が望ましいことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
選択制御の困難なHMFの製造に関して、ルイス酸とブレスレッド酸の両方の機能を有する固体触媒の開発に成功し、選択性を制御することに成功したことで、昨年度の結果と合わせ、木質バイオマスから糖を経てレブリン酸、HMFへと高効率変換するスキームを確立でき、木質バイオマスからナイロンなどの化成品原料への道筋を明らかにした点。
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Strategy for Future Research Activity |
この2年間でヘミセルロース、セルロース成分からの化成品への熱化学変換は当初の目標を達成したのので、さらに経済性が出るように収率向上を追求する。一方、残る課題はリグニンの有効利用法の確立で、最終年度はリグニン樹脂の製造法の確立、樹脂化のための活性化処理法の提案を進め、最終的に木質バイオマスの各成分を無駄なく化成品に変換するためのプロセスフローを確立する。
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