2015 Fiscal Year Annual Research Report
自己修復機能を冠水地下環境において発現する核種閉じ込めセメントバリアの開発
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25249136
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
新堀 雄一 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90180562)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桐島 陽 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (00400424)
千田 太詩 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30415880)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 放射性廃棄物 / 処分システム / 原子力エネルギー / セメント系材料 / 核種閉じ込め |
Outline of Annual Research Achievements |
・検討項目(1) カルシウムシリケート水和物(CSH)の合成と収着実験:昨年度に引き続き、陰イオン核種としてヨウ素に着目し,ヨウ化物イオンに加え、オキソ酸イオンであるヨウ素酸イオンを用いて,乾燥過程を経ずにヨウ素とCSHとの相互作用を追跡した。今年度は固相の量を固定して,液相の量を変化させたところ,ヨウ素はCa/Siモル比に依存せず、CSHに80%内包されることを明らかにした。 ・検討項目(2) CSHの構造変化および収着イオンの化学種の同定:CSHの構造解析および核種の結合状態を定量化するために,ラマンスペクトルを測定した。その結果,CSHの構造はCa/Si比に顕著に依存すること,また、固液比に僅かに依存することが明らかになった。さらに,CSHのシリカ鎖の重合度を調べたところ,今年度のように固相の量を固定した場合でも、昨年度と同様にCSHの養生後に核種を吸着させる試料は少なくとも2週間では重合度は安定しないこと,ヨウ素の収着量はCSHの合成時に核種も投入して養生する場合とほぼ一致することを確認した。 ・検討項目(3) 核種の収着した状態におけるCSHの安定性の評価および処分システム性能評価への適用手法の確立:CSHが処分場周辺のような流動場において安定か否かを確認するために、流動場を伴う反応系を作成し,デジタルマイクロスコープによりCSH形成およびその移動を実験的に確認するとともに,この結果を核種移行モデル(数学モデル)に反映させた。 ・検討項目(4) 核種収着メカニズムの学術基盤の構築と新たなセメントバリアの開発:検討項目(1)および(2)よりCSHの層間に存在する水和水がヨウ素の固定化に大きく寄与しており,ヨウ素の収着によるCSHの構造の変化は限定的であることから,検討項目(3)の数学モデルを利用して,CSHへのヨウ素の収着を分配係数により整理し,バリア材としての核種移行の遅延効果を定量的に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は,固相量を固定し、液相量を変化させて液固比を調整したところ、CSHのヨウ素の収着挙動に及ぼすCa/Siモル比の影響が極めて小さいことを実験的に明らかにした。このことは、昨年度までの液相量を固定した実験では得られなかったもので、収着分配係数によりCSHへのヨウ素の収着挙動を容易に定量化できる意味する。さらに、この挙動は、処分環境のような液/固比の小さい冠水環境においても発現すること、また、CSHの形成後に溶出するヨウ素も、あらかじめCSHを調整時に併せてヨウ素を投入した結果が適用できることも確認した。これらの結果は、セメント系材料の主成分であるCSHが劣化し、Ca/Siモル比が少なくとも0.4まで減少しても、その比の変化とは独立してヨウ素の移行遅延効果を評価できることを意味する。実施前は、多くのパラメータを考慮した複雑なモデルを想定していたが、本結果により、CSHとヨウ素との相互作用を統一的かつ単純なモデルによりに表し得ることできた。このことは、当初の計画以上の進展と言える。 また、100マイクロメートル以下の亀裂幅からなる流動系において、CSHの見かけ上の析出挙動を分布定数系の数学モデルによって表し、前述の実験結果をそのモデルに適用し得る核種移行モデルを構築した。これにより、本セメントバリアの性能を定量的に示すことが可能となった。これらの成果は最適なセメント系バリアの提示に大きく前進させる。
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Strategy for Future Research Activity |
検討項目(1) カルシウムシリケート水和物(CSH)の合成と収着実験:昨年度に引き続き、陰イオン核種としてヨウ化物イオンに着目して、養生温度を実験パラメータとして、冠水環境における水和物(CSH)の形成と核種収着挙動を明らかにする。さらに、塩水系地下水を模擬するためにNaCl濃度を調整し、陰イオンである塩素イオンの挙動も追跡する。加えて、陰イオン核種との相互作用を持つ鉱物を骨材に添加することを想定し、今年度はハイドロタルサイトを単独に用いてヨウ化物イオンとの収着実験を行い、昨年度までに得られたCSHとハイドロタルサイトとの共存下におけるヨウ化物イオンの収着特性を考察する。 検討項目(2) CSHの構造変化および収着イオンの化学種の同定:検討事項(1)において調整したCSHの構造について、ヨウ化物イオンのみならず、ナトリウムイオンおよび塩素イオンの存在の影響をラマンスペクトルにより定量化する。 検討項目(3) 核種の収着した状態におけるCSHの安定性の評価および処分システム性能評価への適用手法の確立:昨年度に引き続きCSHの処分場周辺のような流動場における安定性を確認するために、マイクロフローセルを用いて流動場を作る。今年度は特にCSH形成による流動幅の変化およびその分布を定量的に評価する。 検討項目(4) 核種収着メカニズムの学術基盤の構築と新たなセメントバリアの開発;本年度は、最終年度として、上述の検討項目(1)~(3)の結果を踏まえ、これまで未知であった自由水存在下におけるCSHの自己修復機能についての学術基盤の構築を行う。また、自己修復機能を冠水地下環境において発現する核種閉じ込めセメントバリアとして最適なCSHのCa/Siモル比および骨材としてのハイドロタルサイトの混和率を提示する。この検討と検討項目(3)による数学モデルを用いて、高・低レベル放射性廃棄物の各処分場への本バリア材の適用方法を示す。
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Research Products
(9 results)