2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25250025
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
小原 雄治 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 特任教授 (70135292)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ゲノムアセンブリ / 線虫 / 単為発生 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
有性生殖の意義は生物学における長年の課題であるが、モデル生物の線虫C.elegansグループに最も近い種であるDiploscapter coronatusは長期にわたり単為生殖のみで進化してきた可能性が出てきた。そこで、単為生殖のゲノム基盤を明らかするために本線虫のゲノム解読を進めた。 昨年度に引き続き、ゲノムアッセンブル、トランスクリプトームの更なる解析を行った。ゲノムについては、総延長170Mb(586 scaffolds, N50Scaffoldは979Kb、最長Scaffoldは3.54Mb)を得た。170Mbの値はフローサイトメトリーによる細胞核DNA量と概ね一致している。また、DAPI染色結果は染色体数が2N=2であることを示唆し、これらの結果は半数体ゲノムが85Mbの染色体1本であることを意味する。実際170Mbの80%は互いに似ているが同一ではないパートナー配列(平均5.6%の塩基配列の違いと多くの逆位や転座を含む)を持つ。mRMA-seq等により、170Mb中に20619の遺伝子を同定した。そのうち14455はallelicなペア(2.8%の塩基置換)であり、8073ペアはC.elegans遺伝子とオルソログの関係にあった。このように相同ではあるが高いヘテロ性を持つことから、ペア遺伝子間の発現の比較が可能である。大部分の遺伝子のペアはほぼ同レベルの発現を示したが、約1%の遺伝子ペアでは10倍以上の発現量の差が見いだされた。詳細を調査中であるが、あるペアでは片方にトランスポゾン様の挿入(逆から見れば欠失)が見つかり、興味深い。また、遺伝子アノテーションの結果、減数分裂に関わるいくつかの遺伝子が欠けている可能性があった。この線虫の単為発生とも関わることから、詳細を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複雑なゲノム構成にもかかわらず高品質のゲノムアッセンブルができ、遺伝子構成などを明らかにできた。単為生殖との関係についても多くの手がかりが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、遺伝子アノテーションを進め、特に減数分裂機構との関係を調べた上で、早期に論文発表を行う。染色体構造についても1本らしいという興味深い結果が得られているが、染色体FISHやヒストンの可視化なども含めて巨構造解析を進め、単為生殖ゲノムの進化対応機構を調べてみたい。さらに、遺伝子セットやその発現状態と発生様式の多様性との関係研究を行う。
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Research Products
(5 results)