2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25250025
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
小原 雄治 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 特任教授 (70135292)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ゲノムアセンブリ / 線虫 / 単為発生 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
有性生殖の意義は生物学における長年の課題であるが、モデル生物の線虫C.elegansグループに最も近い種であるDiploscapter coronatusは長期にわたり単為生殖のみで進化してきた可能性がある。そこで、単為生殖のゲノム基盤を明らかするためにこの線虫のゲノム解読を進めた。 昨年度に引き続き、ゲノムアッセンブルとアノテーションを進めた。アッセンブル結果は、総延長170Mb(511 scaffolds, N50Scaffoldは1.0Mb)に達した。単為生殖を考慮すると半数体ゲノムが85Mbと考えられるが、実際その90%近くは互いに似ているが同一ではないパートナー配列(平均5.7%の塩基配列の違いと多くの逆位や転座)を持っていた。mRMA-seq等により、170Mb中に約34,000の遺伝子を同定したが、そのうち約14,000はallelicなペアであることから、通常の意味での遺伝子数は約2万と推定した。この中にC.elegans遺伝子の59%のオルソログが見いだされたが、様々な遺伝子が欠けていた。この中には性決定に関与する遺伝子(xol-1, tra-2等)や減数分裂に関わる遺伝子(rec-8, cho-3/4などKleisin)が含まれていた。特にrec-8についてはC-末端を欠きHIM-1の一部と融合した異常な形のホモログが見つかった。これの相同ペアは見つかっていない。この線虫の単為生殖では、卵母細胞が通常は2回の減数分裂が1回しか起きないことが観察されており、この減数分裂関連遺伝子の異常が関係している可能性がある。また、ペア遺伝子間の発現の比較が可能であり、約1%のペアでは10倍以上の発現量の差が見いだされた。あるペアでは片方にトランスポゾン様の挿入(逆から見れば欠失)が見つかった。このトランスポゾン様配列は他にも挿入が見られ遺伝子発現の上昇がみられている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複雑なゲノム構成にもかかわらず高品質のゲノムアッセンブルができ、遺伝子構成などを明らかにできた。単為生殖との関係についても多くの手がかりが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは早期に論文発表を行う。染色体構造については染色体FISHやヒストンの可視化などがこれまでのところ成功していないが、ミクロ流路を用いた1分子の長鎖解析システム(Irys system)が実用化されたので、この手法を用いた巨構造解析を進める。また、ハプロタイプ解析のシステムも高精度になってきたので(10Xsystem)これも試して、染色体構造を明らかにし、単為生殖ゲノムの進化対応機構を調べてみたい。
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