2015 Fiscal Year Annual Research Report
直播水稲の収量ポテンシャル向上に関わる遺伝子座の作用機構と集積効果の統合的解明
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25252007
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
平沢 正 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30015119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 琢也 富山県農林水産総合技術センター, 農業研究所, 研究員 (40538170)
金勝 一樹 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60177508)
大川 泰一郎 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80213643)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 作物学 / 植物育種学 / 植物生理学 / 作物生産生理学 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
低温出芽性を高める遺伝子qLTG3-1の遺伝子産物は種子登熟期の後半(開花後30日以降)に高い低温発芽性を維持する上で重要な役割を果たしていること、そしてRNA-seq解析から、成熟種子では、ストレス応答や脂質代謝に関わるタンパク質の遺伝子の転写産物量が有意に多くなっていることなどをqLTG3-1をもつ準同質遺伝子系統(NIL)を用いて明らかにした。 コシヒカリとタカナリの正逆染色体断片置換系統群(CSSLs)から第2および第9染色体に推定された皮層繊維組織の厚さに関わる量的形質遺伝子座(QTL)について、推定領域内の組換え固定系統を作出し、第2および第9染色体の皮層繊維組織の厚さに関与するQTL候補領域の絞り込みを行った。そして、3つの太稈関連形質QTLの集積効果を確認し、さらに4つの太稈QTLの集積系統の育成を行った。 光合成速度を高めるハバタキ対立遺伝子の作用機構を検討し、第4染色体の対立遺伝子(qCAR4)は葉の窒素含量、気孔伝導度、葉肉伝導度を高めること、第5染色体の対立遺伝子(qCAR5)は葉の窒素含量を高めること、第8染色体の対立遺伝子(qCAR8)は葉の窒素含量と気孔伝導度を高めることによって、それぞれ光合成速度を高めることを明らかにした。そして、qCAR5をもつNILは乾物生産量が大きく、子実収量も高まった。 3系交配したF1世代86個体から、低温出芽性と穂発芽耐性を高める遺伝子(それぞれSdr1, qESS11)、倒伏抵抗性を高める遺伝子(SCM2, SCM3)、光合成速度を高める遺伝子(qCAR11)の5種類の有用遺伝子をすべてヘテロ型で有する個体を3個体、DNAマーカー選抜した。さらにその後代から85個体を展開し、3~4か所の有用遺伝子がホモ型で、他がヘテロ型のF3を2個体、DNAマーカー選抜した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低温土中出芽性、穂発芽耐性遺伝子、倒伏抵抗性遺伝子、光合成を高める遺伝子の作用機構とこれら遺伝子の集積効果に関する知見が蓄積し、低温土中出芽性、穂発芽耐性、個葉光合成速度、強稈化に関わる5遺伝子をすべて集積する系統の育成が順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 低温土中出芽性、穂発芽耐性、個葉光合成速度、強稈化に関わる5遺伝子の置換領域がすべて1Mbp以下で、有用型に置換されたコシヒカリの準同質遺伝子系統の候補個体の選抜を進める。 2. 本年度明らかになった低温出芽性遺伝子qLTG3-1に関する知見をベースにして、もう一つの低温出芽性遺伝子qESS11についても種子成熟期間の後期におけるその遺伝子産物の果たす役割について解析を進める。 3. 挫折型およびたわみ型倒伏抵抗性の優れるタカナリ、リーフスターの強稈性に関わる太稈および強稈質関連形質のQTLの特定を進め、倒伏抵抗性遺伝子SCM1からSCM4の4つをすべて集積した系統を用いた集積効果の確認を行い、育種素材を育成する。 4. 光合成速度を高める遺伝子qCAR4、qCAR5、qCAR8についてもNILを作成して、集積系統を育成し、光合成速度や乾物生産、収量に及ぼす集積効果を検討する。
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