昆虫ステロイドホルモン産生器官におけるステロイド取り込み・輸送の時空間的制御機構

2013 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 25252023
• Research Institution: The University of Tokyo
• Principal Investigator: 片岡 宏誌 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (60202008)
• Project Period (FY): 2013-04-01 – 2017-03-31
• Keywords: コレステロール / 昆虫 / ステロイドホルモン / リポフォリン / 前胸腺

Outline of Annual Research Achievements

これまでの予備的な実験結果の再現性を確認するとともに以下の実験を行った。
1．昆虫ステロイドホルモン産生器官である前胸腺におけるコレステロールをはじめとしたステロイド類の発育に伴う変動をLC-MS/MSで定量分析した。その結果、5齢期においてコレステロールの増加は発育に伴って徐々に増加するのに対し、7-デヒドロコレステロールはエクジソン（ステロイドホルモン）生合成に先立ち急激に上昇し、脱皮後減少することが明らかとなった。
2．コレステロールの輸送タンパク質と考えられるリポフォリンの精製法を確立し、前胸腺器官培養系を用いてリポフォリンおよび前胸腺刺激ホルモン（PTTH）の効果を検討した。その結果、リポフォリン単独やPTTH単独では前胸腺へのコレステロールの取り込みは促進されなかったが、リポフォリンとPTTHを同時に作用させた場合に前胸腺へのコレステロールの取り込みが約2倍に促進された。この結果は、前胸腺におけるコレステロールの取り込みにおいてリポフォリンが主要な役割を果たし、その作用はPTTHによって促進されることを示している。
3．リポフォリンを介した前胸腺へのコレステロールの取り込み機構を解析するために、リポタンパク質の蛍光標識したリポフォリンならびに蛍光標識したコレステロールを抱合させた標識リポフォリンを作製するための条件検討を行った。その結果、予備的であるが、リポタンパクならびにコレステロールを蛍光標識した蛍光リポフォリンの作製に成功した。
今後、この方法を詳細に検討し、前胸腺へのコレステロール取り込み機構を解析する予定である。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

昆虫ステロイドホルモン産生器官である前胸腺への取り込み機構を解析するためのツールとなるリポフォリンの蛍光標識ならびに標識コレステロールをリポフォリンへ取り込ませることに成功した。この手法を用いることで予定している研究課題を解析できると考えている。また、昆虫ステロイドホルモン産生器官である前胸腺への取り込み機構をPTTHが促進しているという予備的な結果が得られた。
コレステロールを前胸腺への取り込みに関与する新規遺伝子の探索については、エクジソン合成がほとんどない摂食期の前胸腺とエクジソン生合成が高い吐糸期の前胸腺のRNAを調整し、次世代シークエンサーを用いて、前胸腺に時期特異的に発現している遺伝子を解析しているところである。

Strategy for Future Research Activity

昆虫ステロイドホルモン産生器官である前胸腺への取り込み機構を解析するためのツールとなるリポフォリンの蛍光標識ならびに標識コレステロールをリポフォリンへ取り込ませることに成功したことから、この手法を用いた解析を進めるとともに、詳細な解析を進めるためにさらに手法の改良を含めて検討を行う。また、コレステロールを前胸腺への取り込みに関与する新規遺伝子の探索については、次世代シークエンサーを用いて前胸腺に時期特異的に発現している遺伝子を解析を引き続き行う。