2016 Fiscal Year Annual Research Report
食品メイラード反応産物の抗肥満・抗炎症など新規生理機能の解明
Project/Area Number |
25252025
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮澤 陽夫 東北大学, 農学研究科, 教授 (20157639)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲川 清隆 東北大学, 農学研究科, 教授 (80361145)
木村 ふみ子 尚絅学院大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (50321980)
井上 奈穂 山形大学, 農学部, 准教授 (90510529)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 食品科学 / 糖化脂質 / Amadori-PE / メイラード産物 / ナノ粒子 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、食品に含まれるメイラード産物の生体に与える影響を明らかにすることを目的としている。なかでも我々はホスファチジルエタノールアミン(PE)と糖との初期反応生成物(Amadori-PE)が、粉乳、ココアをはじめ、日本の伝統食品である味噌などに多く含まれることを見出し、その化学特性や機能性評価を進めている。Amadori-PEには、構成脂肪酸の違いによる様々な分子種が存在しているが、我々は分子種特異的な機能に着目した。そこで、Amadori-PEの機能の詳細を明らかにするために、Amadori-PE分子種レベルの精密定量法を構築し、食品中のAmadori-PE分子種の解析、および機能性を評価することとした。まず、高純度なAmadori-PE(グルコース型、ラクトース型)を調整し、質量分析を用いた詳細な解析法の開発を試みた。その結果、これまでにない非常に高感度、高選択的な分析法を構築し、食品中のAmadori-PE分子種の分布を明らかにすることができた。現在、これらの成果を論文にまとめ、Science Reportに投稿中である。今後、本法用いたさらなるAmadori-PEの機能解明が期待される。また、新たな視点として、近年では生物学的利用能の向上を目的にナノ粒子(リポソーム)の活用が注目されているが、我々は食品由来のAmadori-PEをリポソームの新規素材として活用できる可能性を考えた。実際に、新規リポソームの調製方法およびその物性評価や細胞内吸収性の評価を行い、安定性、細胞吸収性に優れたリポソームの開発に成功した。今後、ドラッグデリバリーのキャリアーや加工食品として応用展開できることが大いに期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はPEが糖化したAmadori-PEが食品中に含まれることを世界で初めて見出して以来、Amadori-PEの生体内での機能解明に向けた標品合成法やその分析法を開発してきた。しかし、これまでの分析法は比較的感度が低いことや分子種レベルでの分析が達成されていないことから、本研究の足枷となっていた。そこで本年度はAmadori-PEの詳細な解析をするために、液体クロマトグラフィー(LC-)MS/MSによる、Amadori-PE分子種の高選択的な分析法を構築した。さらに本法により、粉乳などの食品に含まれるAmadori-PEの分子種レベルでの定量、および高感度なAmadori-PEの総量の分析を達成した。 さらに本年度は、Amadori-PEを含むリポソームの開発を行った。先ず、Amadori-PEを含むリポソームを作成する最適な条件を決定し、その物性評価を行ったところ、Amadori-PEを含むリポソームは、未糖化PEからなるリポソームよりも分散液中で安定であること、生体内での特異的吸着性が向上することが示唆された。実際に、リポソームの細胞への取り込みをヒト結腸癌由来細胞を用いて評価したところ、未糖化PEよりもAmadori-PEを含むリポソームの方が細胞への取り込み量が増加することが明らかとなった。すなわち、Amadori-PEを含むリポソームは、未糖化PEを含むリポソームと比較して安定性が高く、細胞により取り込まれやすいと考えられ、ドラッグデリバリーキャリアーや加工食品として今後応用展開できる可能性を持った、新たな物性を持つリポソームであることが示唆された。 以上のことから当初の目的であるメイラード産物が生体に与える影響解明に向けての評価法がおおよそ達成できている。加えて、新たな視点であるリポソームの作製にも成功し、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は引き続き平成28年度の研究内容を継続して行う。具体的には、LC-MS/MSによるアマドリPE分析法の応用として、食品・生体サンプルの解析を実施する。特に生体サンプルにおけるアマドリPEの解析として、「食品メイラード産物のバイオアベイラビリティの評価」を実施する。このためにまず、未だ全く明らかでない消化管におけるアマドリPEの吸収代謝機構を解明する。計画当初は、アマドリPEを経口投与し、血液の移行を評価することを想定していたが、吸収代謝をより詳細かつ定量的に評価することを目指し、消化管における脂質分子の吸収代謝の評価に有用である胸管リンパカニュレーション試験を行う。さらに、最終年度として、これまでの研究結果である分析技術を基盤とした食品メイラード反応物の吸収代謝や機能性の評価、および新たな視点として展開した、ドラッグデリバリーキャリアーや加工食品としての食品メイラード反応物の有用性を総括する。
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[Presentation] 粉乳に特徴的に含まれる脂質糖化産物の定量的考察2016
Author(s)
小舘愛, 仲川 清隆, 乙木 百合香, 伊藤 隼哉, 加藤 俊治, 水落 俊介, 木村 ふみ子, 宮澤 陽夫
Organizer
第70回日本栄養・食糧学会大会
Place of Presentation
武庫川女子大学中央キャンパス(兵庫県西宮市)
Year and Date
2016-05-13 – 2016-05-15