2013 Fiscal Year Annual Research Report
トランスクリプトームの網羅的解析情報に基づく第三世代マツ材線虫病抵抗性品種の創出
Project/Area Number |
25252028
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
白石 進 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70226314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 康浩 福岡県森林林業技術センター, その他部局等, 研究員 (20558613)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マツ材線虫病 / 樹病 / 抵抗性遺伝子 / 森林保護学 / 育種学 |
Research Abstract |
トランスクリプトームの網羅的解析のための分析法の改良:トランスクリプトームの網羅的解析法の一つとしてSAGE (Velculescu 1995) 法が用いられている。最新のSAGE改良法であるHigh-Throughput (HT) SuperSAGE(Matsumura et al. 2010)をベースに,多検体処理が容易で,低コストの簡便分析系の構築を試みた。その結果,①従来の1/10のコストでライブラリーを作成できること,②Suppression PCRとループアダプターの併用により面倒なゲルからのDNA断片の回収作業から解放され,分析効率を大幅に向上できること,③安価なdual labelingの導入により多検体(192検体)の同時分析が可能になったこと,等により,極微量mRNAからの分析系が構築された。 材線虫接種後のトランスクリプトームの時系列解析と抵抗性クローンの特性評価:第一世代のマツ材線虫病抵抗性の16クローンと感受性の2クローンにマツノザイセンチュウを人工接種し,その後の時系列(接種後1時間~3週間の14ステージ)での遺伝子発現の変化を追跡するための分析材料を調整した。得られた試料は上記の改良HT-SAGEを用いてトランスクリプト解析を行っている。 クロロフィルによるマツ材線虫病の発病評価法の開発と抵抗性クローンの特性:材線虫病では、病徴の進展にともない針葉が褪色することから、発病の指標としてクロロフィル量に着目し、上記サンプルでの経時変化を調べた。対照として滅菌水を接種した場合,抵抗性および感受性クローンとも,明らかなクロロフィルの減少は観察されなかった。一方、線虫を接種した場合、感受性クローンでは減少した。これに対し、抵抗性では、経時変化にクローン間で大きな違いが認められたことから、抵抗性メカニズムに複数の要因が関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シーケンサーの導入に伴う技術修得に若干の時間を要し,遺伝子発現(トランスクリプトーム)解析を年度内に完結することはできなかったが,現在順調に分析系が動いており,今後の研究の推進上,大きな問題になることはない。さらに,HT-SAGEの改良により,多検体の簡便・迅速処理が可能になっており,分析作業の加速化が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画のマツ材線虫病に対する抵抗性関連遺伝子群の解明に大きな変更はない。抵抗性クローンがもつ抵抗性メカニズムをよりよく理解するためには,感受性クローンにおける抵抗性関連遺伝子群の発現挙動の解明と,さらには未だ解明されていない発病から枯死に至る代謝メカニズムを解明する必要がある。このため,感受性クローンのトランスクリプトームの詳細な解析を実施する。また,マツノザイセンチュウの病原性(加害性)に単離系統間で大きな違いがあることから,病原性を異にする複数系統(3系統を予定)の線虫接種によるクロマツにおける遺伝子発現の差違についても検討する。
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