2016 Fiscal Year Annual Research Report
クライオ顕微二次イオン質量分析が拓く木質科学の新展開
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25252032
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
福島 和彦 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (80222256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松下 泰幸 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (60335015)
青木 弾 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (80595702)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Cryo-TOF-SIMS / リグニン / 微量分析 / 定量分析 / ケミカルマッピング |
Outline of Annual Research Achievements |
飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)によって不均一な生体組織あるいは複合材料中における微量成分の定性的な分布評価が可能である。申請者はこれまでに、急速凍結させた試料を連続的に切削することにより、細胞(細胞壁)内にあるがままに存在するあらゆる構成成分の三次元分布を、分子レベルで可視化する複合装置(クライオTOF-SIMS/SEM システム)を世界に先駆けて開発してきた。本研究ではこの解析法をさらに発展させ、木質バイオマスを構成する成分の定量性の向上と、特定構成成分周囲の環境情報(各種成分の存在状態解析)をも評価できる次世代分析技術の確立を目的とする。 平成25-26年度までの本プロジェクト前半においては、微量成分の定量評価、二次イオン発生機構、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)による量的評価、およびTOF-SIMSデータの統計学的解析について検討した。平成27-28年度ではこれまでに確立された分析手法を駆使して、以下2項目に重点的に取り組んだ。得られた結果については各種学会ならびに国際誌にて発表した。 1) 樹木組織中微量成分のケミカルマッピング: 樹木中微量成分のケミカルマッピングを達成するため、抽出実験を行い、各種抽出成分を単離・精製した。得られた化合物についてTOF-SIMS分析およびそれら化合物水溶液のcryo-TOF-SIMS分析を行い、標品スペクトルを得た。さらにそれら化合物が植物中でどのような分布状況にあるのかを可視化した。 2) バイオマス変換における固液反応過程の追跡: 水溶液系を凍結してそのまま分析できるcryo-TOF-SIMSは、固液反応などの不均一系における各種成分の挙動追跡に適用することが可能である。木質バイオマスの主要用途であるパルプ化について、蒸解パルプの洗浄工程を詳細に追跡し、添加薬剤の働きを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の後半では、微量成分への応用ならびに分析の三次元化、そして様々な応用展開を目指す。H28年度では以下の2項目を重点的に推進した。 1) 樹木組織中微量成分のケミカルマッピング 2) バイオマス変換における固液反応過程の追跡 実績概要に記載したように、植物中微量成分に関する興味深いマッピングデータが得られ、それらの成果について多数の論文発表が達成できたことから、順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿い、応用展開として様々な樹木中微量成分の時空間配置を可視化し、植物生理学的な役割を解明する。さらに各種の状態・物性解析との複合化を目指して、研究を推進する。
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Research Products
(16 results)