2014 Fiscal Year Annual Research Report
キャピラリー・バリア盛土による放射性廃棄物・汚染物質の長期貯蔵保管工法の提案
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25252043
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
森井 俊廣 新潟大学, 自然科学系, 教授 (30231640)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 薫 神戸市立工業高等専門学校, 都市工学科, 教授 (80443638)
竹下 祐二 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (90188178)
加藤 正司 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10204471)
藤巻 晴行 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 教授 (90323253)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | キャピラリーバリア / 放射性汚染物質貯蔵 / 盛土 / 試験施工 / 遮水・排水機能 / 限界長 / 土の不飽和水分特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
キャピラリーバリア(CB)は,砂層とその下に礫層を重ねた単純な土層をいう。砂と礫の不飽和水分特性の相対的な違いにより,上部から浸潤してきた土中水は両層の境界面で遮断・保水され,境界面が傾斜していると保水された土中水は境界面に沿って流下し排水される。本研究では,この優れた雨水遮断・排水機能と,自然材料であるため極めて長期にわたって機能が維持される利点を活かして,傾斜CBを表面被覆層と底部排水層に敷設した盛土を提案し,放射性汚染土壌および極低レベル放射性廃棄物の貯蔵保管工法の展開を図ろうとするものである。 具体的内容:室内土槽試験装置を設計・試作し,CB土層(砂と礫の2層系土層)の限界長の測定試験を実施した。まだ予備的な試験段階であるため,今後,降雨量ならびに材料特性(砂の種類)を試験因子とした測定実験を進めていく必要がある。 意義:CB盛土の構造規模を左右する限界長(浸潤水を遮断できる範囲/距離)は,おおむね,Steenhuisらの式(1991)により推定できることが分かっている。土槽試験により,この推定式の妥当性が確認できれば,CB盛土の構造設計を確実に行えることができるようになる。また,これまでこの式の妥当性は国内外で3m程度までしか確認されておらず,当該試験装置で10mレベルまで確認することが出来れば,CB利用に対する期待度はは格段に大きくなる。 重要性:上記のように,実務的な構造設計式が確定できること,限界長10mレベルという実規模大の適用性を確認できることの2点において,当該土槽試験装置の重要性がある。 今後の研究の展開:現在,実験条件の設定により,限界長3mを測定確認できている。今後,材料条件および土層の被覆条件を変え,実規模大の設計に適用できる10mレベルの限界長の測定をめざす。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初研究目的において,研究期間内に明らかにしようとした3課題に対し,次のような達成状況と今後の見込みがあることから,「おおむね順調に進展している。」と評価した。 A.盛土の施工法・品質管理法の提示と長期供用性の実証: ①CB機能の成否がクリアな境界面の造成に依拠することから,実務的な展開を図る上で,施工の手順と機材の取り回しが重要なファクターとなる。初年度における実規模大の盛土の試験施工を通して,CB盛土の施工法・品質管理法を検討できた。②その後の継続的な土中水分量のモニターを通して,CB機能の長期供用性を明らかにできつつある。 B.盛土表面における植生被覆効果の定量化と極端豪雨時における水理学的安全性の評価: ①CB層に到達する浸潤水ができるだけ少なくなるように,盛土表面の植生被覆により地表面からの降雨浸潤を低減させる必要がある。この低減効果を,2 年度間の植栽地盤における雨水浸潤計測により定量化しつある。②飽和不飽和浸透流解析プログラムを整備し,極端な豪雨条件下における盛土内の土中水分移動予測が可能となった。今後,具体的な極端降雨の設定を行い,数十年単位の長期間における予測計算を進める予定である。 C.盛土の構造規模および材料選定に関わる設計基準の作成: 盛土の構造規模は限界長により決定され,この限界長は境界面の傾斜角と使用材料の不飽和水分特性・飽和透水係数に支配される。試作した長さ10mの室内土槽実験装置を用いて実規模大の限界長を測定できる環境が整えられたことから,今後実験データを積み重ねることにより,限界長に関わる設計式を確立することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の「現在までの達成度」評価に基づき,今後の研究の進め方について次の方策を考えている。 A. 盛土の施工法・品質管理法の提示と長期供用性の実証: 初年度のCB試験盛土の造成から継続的に観測値が得られており,通常の降雨に対しては十分な遮水・排水機能を持つことが確認できている。しかし,最近頻発するようになった大規模降雨に対しては,継続時間によってCB機能が損なわれる場合があることが判明している。CB盛土の造成に当たっては,雨滴浸食に弱い砂層を地表面に露頭させることができないため,粘性土系の被覆土層を敷設することになる。今年度は,追加確認試験として,現行のCB試験盛土に表面被覆土を施工し,現実的な施工条件のもとでのCB機能の観測を行う。 B.盛土表面における植生被覆効果の定量化と極端豪雨時における水理学的安全性の評価:第2年度に続いて,継続して造成斜面における雨水浸潤計測を進める。一方,すでに整備した飽和不飽和浸透流解析プログラムにより盛土内の水分挙動の長期予測を行うえで,今後国内で想定される極端豪雨をうまく設定することが大事となる。MRI-CGCM3やMIROC5などにより公表されている将来予測データのダウンサイジングにもとづいて,リアリティのある豪雨を決定していく予定である。 C.盛土の構造規模および材料選定に関わる設計基準の作成: 第2年度に試作した室内土槽試験装置を用いて,砂材料の種類(特に粒度分布)および降雨強度を変えた限界長測定試験を進め,Steenhuisらの式の妥当性,ならびにCB盛土構造物の設計式としての適用性を明らかにする。
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