2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25252050
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
辻 尚利 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所動物疾病対策センター生物学的製剤製造グループ, グループ長 (70355171)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八田 岳士 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所細菌・寄生虫研究領域, 主任研究員 (00455304)
田仲 哲也 鹿児島大学, 獣医学部, 准教授 (00322842)
白藤 梨可 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 助教 (00549909)
|
Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2017-03-31
|
Keywords | 獣医学 / マダニ / 低酸素応答 |
Research Abstract |
ヒト・動物は空気中の酸素を取り込み、効率的なエネルギー(ATP)代謝を行う。吸血性節足動物のマダニも例外なく、有酸素下で自由生活や寄生生活期の物質代謝を営むと想定されるが、申請者らによって、マダニ生活環の維持に必須な宿主体表上での吸血行動は、個体内を自ら低酸素環境にして行われていることが見出された。この発見により、これまでに取り組んできた『マダニの吸血と病原体伝播の分子基盤の解明』から、抗マダニ薬を開発する創薬プラットフォームの構築において、創薬分子の標的となる『吸血・病原体伝播調節物質』が低酸素応答によって一括制御されていることを強く示唆するものであるとの結論に至った。初年度では、以下の解析を実施した。 1.マダニにおける低酸素応答経路の解明:①細胞・臓器のトランスクリプトーム解析:次世代シーケンサーを用いて、低酸素環境下で培養したマダニ胚細胞の遺伝子発現パターンを網羅的に解析した。②低酸素応答分子の局在:マダニ胚細胞及び臓器を用いて、複数の分子を同時可視化する多重染色を行い、細胞質内局在を明らかにした。③HIF-1を中心とした低酸素応答経路の機能解明:マダニの胚細胞系を用いて、HIF-1αの細胞質内での量的、質的な挙動を明らかにした。④低酸素応答とTORの相互関係:吸血行動におけるTORの挙動を明らかにした。 2. 低酸素応答経路と吸血行動を支える代謝系経路の相互作用の解明:①臓器間のクロストーク・ネットワーク解析:継時的に採取した中腸などの諸臓器を、マダニアレイと次世代シーケンサーを用いて、情報伝達系の違いを明らかにした。②HIF-1-TOR経路と吸血実行経路の相互作用の解析:TOR下流にある消化などの吸血、オートファジー、卵黄合成などの実行経路への情報伝達に必要なON, OFFのHR調節物質の存在を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低酸素応答経路を構成する低酸素応答調節物質の同定、発現時期、局在などの動態と吸血行動における生物学的役割が徐々に明らかにすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
低酸素応答調節物質と我々が解明してきた吸血・病原体伝播調節物質からなる吸血と病原体媒介の『協調的調節機構』を、細胞、臓器及び個体レベルで明らかにする必要があり、そのためには両調節物質の論理的記述を急ぐ必要がある。
|