2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25252050
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
辻 尚利 北里大学, 医学部, 教授 (70355171)
|
Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2017-03-31
|
Keywords | 獣医学 / マダニ / 低酸素応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに取り組んできた『マダニの吸血と病原体伝播の分子基盤の解明』から、抗マダニ薬を開発する創薬プラットフォームの構築において、創薬分子の標的となる『吸血・病原体伝播調節物質』が低酸素応答によって一括制御されていることを受けていることが判明している。開始3年目の本年度は、これまでに明らかにされたマダニにおける低酸素応答経路と吸血行動を支える代謝系経路の相互作用の知見をもとに、バベシア原虫感染マダニにおける原虫と低酸素応答経路の相互関係の解析を実施した。はじめに、マダニ個体内におけるバベシア原虫の分化・増殖はマダニ代謝に依存することが分かってきていることを受け、低酸素応答機構と原虫生存に与える影響を調べ、細胞内外、臓器間に構築されたネットワークと、病原体媒介の相互関係の動的変化を病原体伝播システムとして捉えた統括的理解を図った。これによって、①原虫感染によるHR調節物質の阻害・制御の動態及びHR調節物質が原虫の発育・伝播に果たす機能を細胞、組織、臓器別に明らかとなった。②各種阻害剤を用いたキナーゼアッセイを行った結果、マダニ個体における原虫伝播時の役割を明らかにすることができた。③原虫感染が解糖系HIF-1、PI-3K/AKT/TOR経路に及ぼす影響を調べた結果、原虫感染による低酸素応答経路に変動があることが分かった。④さらに、分子間クロストークを介した細胞自律的な原虫制御機構としての低酸素応答経路の機能と役割解明から、マダニ媒介性病原体の発育・伝播を支配する分子基盤が存在することが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低酸素応答経路参画分子の選抜が順調に進み、同時にノックダウンマダニを用いた個体レベルにおける低酸素応答の検証とバベシア原虫感染マダニにおける原虫と低酸素応答経路の相互関係の解明が予定通り推進されていることから、阻害剤候補化合物のスクリーニングに必要なHR調節物質の立体構造とリード化合物を決定できるところまで進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度同様に、可視化技術をさらに導入し、ネットワーク化された低酸素応答経路の機能解明を進めるためには臓器と個体レベルでの分子間相互作用を論理的に解析する必要がある。
|