2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25253022
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
武藤 誠 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70281714)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柿崎 文彦 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00609076)
園下 将大 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80511857)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | がん転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトでは二つの中心課題を据えている。即ち、1)大腸がんの浸潤、転移におけるケモカインCCL15と受容体CCR1の役割、及び、2)Notchシグナル伝達経路による大腸がん浸潤、転移促進機構の研究である。以下の10.で詳述するが、概要としては以下に要約される。 1. については、マウスCCR1遺伝子の中に、細胞膜結合型発光タンパクmVenusの構造遺伝子を遺伝子操作で組み込み、mVenus の蛍光出力でCCR1の発現をモニターするマウスを作出した (Hirai et al., Clin Exp Metastasis 31:977-989, 2014)。このマウスの大腸がん細胞の肝転移巣周辺に集簇したCCR1 発現細胞は好中球に加え、単球系のfibrocytes が多く存在し、後者は細胞外物質として大量のコラーゲンを発現することが明らかになった。また、ヒトの大腸がん肝転移巣周辺にみられるCCR1発現細胞を更に詳細に解析した所、大部分は所謂Myeloid derived suppressor cells (MDSC; CD11b+, CD33+, and HLA-DR-) であることを明らかにした(Inamoto et al., submitted for publication)。 2. については、我々が発見した大腸がん転移抑制遺伝子Aesの作用機構の解明を進め、Notch シグナル伝達により、下流では、Notch-Dab1-Abl-Trio-Rhoの流れで活性化が起きること、Tiro のY2681チロシン残基のリン酸化(pY2681)が, がん患者の生存率に大きな影響を及ぼし、診断に使える事や、Abl阻害薬による、補助化学療法による転移予防治療の可能性が大きく示唆された(Sonoshita et al. Cancer Discovery 5:198-211, 2015)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1. については、マウスCCR1遺伝子の中に細胞膜結合型発光タンパクmVenusの構造遺伝子を遺伝子操作で組み込み、mVenus の蛍光出力でCCR1の発現をモニターするマウスを作出した (Hirai et al., Clin Exp Metastasis 31:977-989, 2014)。このマウスの骨髄由来細胞からCCR1発現細胞をFACSで分離解析した結果、大腸がん細胞の肝転移巣周辺に集簇したCCR1 発現細胞は単球系のfibrocytes が多く存在し、大量のコラーゲン細胞外にを発現することを発見した。一方ヒトの大腸がん肝転移巣周辺にみられるCCR1細胞の大部分は所謂Myeloid derived suppressor cells (MDSC; CD11b+, CD33+, and HLA-DR-) であることを発見した(Inamoto et al., submitted)。 2. については、Notch シグナル伝達による転写で産生される転移に重要な分子はDab1であること、このDab1のチロシン残基はAblキナーゼにより燐酸化され、リン酸化Dab1は逆にアダプターとしてAblの自己燐酸化と活性化を促進する事を解明した。さらにAblの標的として大腸がん浸潤・転移に重要なのはGEFタンパクであるTrioであり、Y2681チロシン残基のリン酸化(pY2681)がRho-GEFを活性化することを証明した。そこで、京大病院で腫瘍の摘出手術を受けた337例のを解析したところ、pY2681陽性患者は 陰性患者にくらべて著しく予後が悪いことが判明した(p<0.001)。この検査を利用すれば患者の予後を判定でき、更にAbl阻害薬による化学療法で転移予防治療が可能になろう(Sonoshita et al. Cancer Discovery 5:198-211, 2015)。
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Strategy for Future Research Activity |
1. のCCR1受容体とCCL15 (CCL9)リガンドの役割について、マウスとヒトでは受容体の発現細胞や組織が微妙に異なる事を見いだしたので、その差異を踏まえつつ、臨床応用に持って行くための、研究を更に進める。すなわち、マウスモデルと手術標本の双方を並行して解析し、マウスから得られた結果を臨床例で確認しながら、臨床応用の可能性を探求する。
2. については、Trio(pY2681)の臨床診断への応用性が確立したので、これらの知見を深めるために、大腸がんについては、京大病院だけでなく、複数の他施設の手術例について検索を行い、また胃がん、肺がんでのデータも症例増やして多角的検討を行う。
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Research Products
(7 results)