2015 Fiscal Year Annual Research Report
ALSの発症に関わるADAR2遺伝子発現異常を引き起こす分子病態の解析
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25253063
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
郭 伸 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (40160981)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脳神経疾患 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)では、RNA編集酵素 adenosine deaminase acting on RNA 2 (ADAR2)の 発現が進行性に低下することが病因的メカニズムに深く関わっているため、ヒトADAR2遺伝子(ADARB1) の発現制御機構を解明することを目的とする。 遺伝子制御機構は組織特異性が高いことから、運動ニューロンにおけるADARB1の発現を解析するためにcap analysis of gene expression(CAGE)解析を行った。凍結保存した正常対照ヒト脊髄より採取した単一運動ニューロン2万個以上からの結果を、対照として採取した後角組織、白質組織の結果と比較した。その結果、ADARB1近傍のCAGEタグの分布や強度が運動ニューロンと対照組織では大きく異なっており、予想通り組織特異的な遺伝子発現制御機構が働いていることが示唆された。 さらに、ADAR2 発現レベルの異なる組織におけるADARB1のヒストン修飾、DNase1感受性領域、CpGアイランドの比較から、プロモーター領域を推定した。この領域は、以前構築したレポーターアッセイ系に用いたものより広く、プロモーター活性領域をカバーできていなかった可能性が明らかになったため、より3’側に延ばしたリポーターアッセイ系構築のためのコンストラクトを作成している。 また、ADARB1プロモーター領域の転写因子結合モチーフを解析し、CAGEタグとの関連も含めた解析から単独ないしダイマーで働く40因子を選定した。昨年度行ったADAR2 発現レベルとの相関性に基づいた選定と併せると、15種類の転写因子が最も有力な候補に絞られた。これらの因子の生物活性を検討するため、コンストラクトを作成している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の開始後、研究の遂行に有用なENCODEおよびFANTOM5プロジェクトの研究結果が相次いで公表され、研究計画を修正した。今年度は単一運動ニューロン組織からのCAGE解析が終了し、ADAR2 遺伝子ADARB1の発現パターンが運動ニューロンと対照組織とで大きく異なることが明らかになり、運動ニューロン特異的なADARB1発現制御解析のための基盤が整備された。これにより、転写因子開始部位およびエンハンサー部位の同定、およびその近傍の詳細な遺伝子マップの作成、転写因子の選定、リポーターアッセイシステムの構築を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
ADARB1遺伝子の制御に関わる転写因子候補につき、生物活性の確認作業を行う。すなわち、本年度のCAGE解析よりプロモーター領域全体を含むように修正したリポーターアッセイ系を用いて、これまでの解析により絞り込まれた転写因子の単独ないし複数の組み合わせによるADARB1遺伝子の制御活性を測定する。これにより絞り込まれた候補転写因子に付き、培養細胞系を用いてADAR2 発現制御活性を確認する。これらの転写因子に付きヒト運動ニューロンにおける発現変化、変異の有無をALS患者と健康対照者との比較において解析し、ALSの病因的意義を探る。
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Research Products
(11 results)