2016 Fiscal Year Annual Research Report
Setting up Technical guidelines for sustainable development of Historic Environmental City of Hue, Vietnam and Establishing 'Study for Cultural Assets Conservation and Utilization Study'
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25257308
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中川 武 早稲田大学, 理工学術院, 名誉教授 (30063770)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 文化遺産 / 保存活用 / ベトナム / 持続的発展 / 人材養成 / 国際協力 / 技術移転 |
Outline of Annual Research Achievements |
「延福長公主祠」のあるキムロン地区は、阮朝期以前からの由緒ある土地柄、伝統的木造家屋が比較的多く残る地域となっている.それらは、現地の言葉で「庭の家」と呼ばれるように、敷地に広く庭を構えて、様々な種類の木を植える.これらの歴史文化資源の重要性について、現地との共有し、今後の利活用について検討を行った結果、当該研究で設定した「文化財修復技術」「保存科学」「災害リスク軽減」「文化的景観保全」「持続可能な観光」「公教育」の研究6項目を横断的に連関させるべく、地域住民の参加を促進するワークショップを開催した.内容としては、地域の歴史文化資源の中心である、「延福長公主祠」における現地小学生の写生大会を通じて、周辺に住まう人自身が、価値を再発見・再認識するというもので、文化遺産の維持・継承・存続のための「意味づけ」の一助となり得た. 「文化的景観保全」として、登り梁ケオを合掌組とする梁行架構を桁行方向へ展開する、ベトナム中南部に独自の木造架構の解明のため、比較対象として、海上交易を通じて影響したと考えられる中国東南沿岸部での比較研究調査を行い、一定の成果を得た. また、19世紀末より、ベトナムと同様に、フランスの植民地となっていた、カンボジア・シェムリアップの、フランスによって入植された市街地においても、コロニアル様式の建物の比較研究調査およびヒアリングによる歴史調査を行い、同地の建物および市街地形成の経緯や、インドシナ連邦内でのベトナム人の活動についての知見を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究において設定した「技術支援」「意味づけ」「マネジメント計画」という3つの基軸的なスキームの下位項目である「文化財修復技術」「災害リスク軽減」「文化的景観保全」「持続可能な観光」「公教育」の5項目において、関係する機関との協議を行い、当該研究の意義および目標を共有した.特に緊急性の高い課題である文化財建造物の修復技術については、継続的な技術移転を進め、さらに「災害リスク軽減」「文化的景観保全」「持続可能な観光」「公教育」といった、地域の歴史的資源(文化財)の今後に関する取り組みとして、地域住民とのワークショップを行った. これにより、登り梁ケオを合掌組とする梁行架構を桁行方向へ展開する、ベトナム中南部に独自の木造架構の解明という建築史学的テーマが、地域の歴史的資源の価値の再発見・創出へと連結する可能性が高まった.
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Strategy for Future Research Activity |
阮朝およびその始祖である広南阮氏によるチャンパの攻略と、その成果である現在のベトナム中南部域への勢力拡大がある.登り梁ケオの架構を残す建物の分布を見る限り、この「南進」の過程で、独自の架構形式を生み出したか、何らかのかたちで土着的伝統の再編があったことは明らかであり、これはチャンパの建築設計技術との交流を示唆するものである.フエ周辺に点在するチャンパ遺跡の尺度分析により、ベトナムが他の地域との交流を通じて、如何にして尺度概念を受容し、あるいは共有していったかの解明を目指す.またチャンパ遺跡とその周辺遺構からの変遷の痕跡を探り、登り梁ケオの構造形式につながる過程の復原研究も試みたい.
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