2014 Fiscal Year Annual Research Report
大規模コンテンツセントリックネットワークのモデル化・解析・制御
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25280030
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
大崎 博之 関西学院大学, 理工学部, 教授 (00294166)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 情報ネットワーク / ネットワークアーキテクチャ / コンテンツセントリックネットワーク / 大規模ネットワーク / ネットワークモデル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、大規模コンテンツセントリックネットワークにおける情報拡散のダイナミクスを分析するための数学的解析手法を構築するとともに、解析結果を応用することにより、コントローラブルな大規模コンテンツセントリックネットワークを実現する。具体的には、以下の 3 つの研究課題に取り組む。 1. 流体近似手法を用いた大規模コンテンツセントリックネットワークのモデル化 2. 現代制御理論を用いた大規模コンテンツセントリックネットワークのダイナミクス分析 3. 利用者が情報拡散ダイナミクスを自由に指定できる大規模コンテンツセントリックネットワークの設計 平成 26 年度は、平成 25 年度までの研究成果を発展させることにより、一般的なネットワークトポロジにおける大規模コンテンツセントリックネットワークのモデル化手法を考案するとともに、オープンソースソフトウェア実装を利用した実験により、大規模コンテンツセントリックネットワークのスケーラビリティを調査した。具体的には、多段キャッシュネットワークにおけるキャッシュのヒット率を解析的に求める近似アルゴリズム MCA (Multi-Cache Approximation) を利用することにより、任意のネットワークトポロジにおける CCN (Content-Centric Networking) の性能を解析した。また、CCN のオープンソースソフトウェア実装である CCNx を仮想ネットワーク上で動作させた時の通信性能を計測するとともに、プロファイリングによって性能ボトルネックを分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成 26 年度では、多段キャッシュネットワークにおけるキャッシュのヒット率を解析的に求める近似アルゴリズム MCA (Multi-Cache Approximation) を利用することにより、任意のネットワークトポロジにおける CCN の性能を解析した。複数のルータと、複数のリポジトリから構成される CCN ネットワークを対象とし、エンティティがコンテンツを要求してからコンテンツを取得するまでに要する時間 (コンテンツ配送遅延)、コンテンツ取得のスループット、ルータやリポジトリが故障する場合にエンティティがコンテンツを正しく取得できる確率 (可用性) を解析的に求めた。さらに、いくつかの数値例により、ネットワークのトポロジが CCN の有効性に与える影響を調査した。その結果、CCN では、リポジトリに近いルータほど、コンテンツのキャッシングによる性能向上の恩恵 (コンテンツ配送遅延の短縮および可用性の向上) を受けることがわかった。
さらに、CCN のオープンソースソフトウェア実装である CCNxのネットワーク規模に対するスケーラビリティを実験によって調査した。単一の物理計算機上でさまざまな規模の仮想ネットワークを構築し、コンテンツを保有するリポジトリに対して、コンテンツ取得要求を繰り返し発行した。性能指標として、コンテンツ配送の総スループット、ネットワーク中でのパケット廃棄率、コンテンツ配送遅延をそれぞれ計測することにより、CCNx のネットワーク規模に対するのスケーラビリティを分析した。その結果、実験に使用した物理計算機上では、CCN ルータ数が 20~30 を超えると通信性能が低下すること、また、CCN ルータにおける Data パケットの署名計算が CPU 時間の約 29% を占めることなどがわかった。さらに、Data パケットの署名計算をハードウェアにオフロードすることで、CCNx のネットワーク規模に対するスケーラビリティがどの程度改善されるかを調査した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成 27 年度は、平成 26 年度までに構築した、大規模コンテンツセントリックネットワークにおける情報拡散 (生成・蓄積・複製・転送・廃棄) のダイナミクスモデルのさらなる高度化に取り組む。特に、CCN ルータ間の接続関係が明示的に与えられる決定的なネットワークトポロジの記述だけではなく、CCN ルータの次数分布によって暗示的に与えられる確率的なネットワークトポロジの記述を可能とする。
また、平成 26 年度までの研究をさらに発展させ、大規模コンテンツセントリックネットワークにおける情報拡散ダイナミクスのモデルを用いて、CCN 上へのデータ配置機構、CCN のコンテンツルーティング機構、ユーザからのコンテンツ要求パターン、CCN ルータのキャッシュ配置機構、CCN ネットワークのトポロジなどが、大規模コンテンツセントリックネットワークにおける情報拡散の速度・効率性・安定性・ロバスト性・信頼性に与える影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成26年度に実施した大規模コンテンツセントリックネットワークの性能評価において、当初予定の実験回数を経ることなく予想していた結果を得ることができたため、この実験のため計上していた支出が当初より少なく済んだため未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
大規模コンテンツセントリックネットワークの性能評価に必要なコンピュータ周辺機器の購入に使用する予定である。
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Research Products
(29 results)