2014 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ波を用いた新しい動作計測システムの提案と能楽を対象とした検証
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25280065
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
森田 寿郎 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (30329081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植田 一博 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (60262101)
土井 靖生 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (70292844)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 情報システム / 人間情報学 / 人間計測 / 動作計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究項目1:前年度の開発を受け,現有の専用受信器に対するPN符号逆拡散機能の追加を実施した.同時にこれまでの実験結果を受け,実用上の観点等を考慮し,受信器にオートゲインコントロール機能,PN符号位相ロック機能, 位相角ディジタル演算機能の追加を行った.製作した受信器により,昨年度製作した小型送信機からのPN符号拡散を施した送信波の選択的な受信・復調を行えることを確認した.これにより高精度な多点同時測位という,本研究項目の根幹を為す機能実証の準備が整った事になる.同等の機能を持つ受信器を2台製作し,2台の受信器計8本の受信アンテナにより,リアルタイムでの3次元測位を行えるハードウェアの構成を完了した. 研究項目2と3:能楽のハコビのスキル分析を行った.速度変化の調節を行うステップは,加速では2または3歩目,減速ではラストステップであると特定できた.調整の技としては,空間的条件を調整するのに歩数のみならず歩幅で調整する技があること,2または3歩目に足の踏み出しを遅らせる「タメ」の技があることを見出した.これらの技をリズムとテンポの生成に用いて,序破急のハコビが生み出されおり,特に序破急のうち序から破への展開は,自然対数に則った規則性を持つ一連の流れのある運動である可能性を発見した.この内容を査読付論文(2014年11月掲載済み)とした.また物理的共通指標を用いて,Howorthが定義する基本動的姿勢における下肢の比較分析を行い,物理的共通指標間の関係の構造化によって,ヒトの下肢における基本動的姿勢の設計手順を明らかにした.実験により各運動種目での基本動的姿勢の測定を行い,物理的共通指標値の計算,およびウォード法によるクラスター分析を用いて各運動種目の比較と分析を行った.その結果,舞踊,武術,運動競技の分野横断的な分類に成功した.この内容を査読付論文(2015年掲載決定)とした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究項目1:昨年度研究計画の内,PN符号逆拡散機能を有する受信器システムの開発及び基本的な機能実証を達成した.受信器にはPN符号逆拡散機 能の他に実用上必要となる複数の機能を追加し,且つ同等の受信器を2台製作することで,本研究項目の目的とする機能実証の準備を完了した.一方で 受信位相角データをリアルタイム解析し,3次元の定位を実現するソフトウエア開発は未達であり,その為実用上想定される様々な動きの測位精度の検 証や,着衣状態等様々な測定環境下での計測機能検証はこれからである. 研究項目2と3:能楽,舞踊,武術,運動競技における姿勢を分野横断的に分類する物理的共通指標を考案した.
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目1:昨年度未達である,リアルタイムでの3次元測位の機能検証を早期に行い,本研究項目の目的とした測位原理の実証を早期に完了する.機能検証した測位システムについて,知財管理の為の特許取得を行う.完成したシステムを用い,実際に人体に装着した動作計測を1)着衣しない状態で 通常の磁気式または光学式モーションキャプチャ装置による計測データとの比較による精度検証,2)激しい動きの計測/ゆっくりした動きの計測,単独での計測/複数 人での計測,屋内・屋外等様々な測定環境下での計測,等様々な条件での計測によるシステムの動作検証を行う.リアルタイム解析を行うソフトウエアには,複数の受信アンテナからの受信信号に対し,適切な選択・重み付けの下に位置推定を行う機能や,受信アンテナ位置誤差やアンテナ配線・受信回路による 受信信号遅延による誤差などを計測データから推測する機能等,最終的な測位精度を最大限高めるために求められる機能が複数ある.これらの機能の実装・テストを,上記の動作検証と併せて実施する.研究項目2と3:システムが完成し次第,能楽による検証実験を実施する.
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Causes of Carryover |
現有の受信器の有する受信アンテナは4本であり,3次元測位の為に原理的に必要な最小限のアンテナ本数である.送信アンテナを人体に取付けた実際的な測位のためには,人体による送信波の遮蔽を考慮し,より多くの受信アンテナを測定対象周囲に配置する必要がある.このため同等の受信器を新たに2台製作し,計12本の受信アンテナで受信システムを構築する計画である.一方複数の受信システムを組み合わせて用いる際にはお互いのクロック信号を同期させ,且つ同期の為の配線による信号遅延の影響が十分小さいことを検証する必要がある.この点を考慮し,2台の受信器を同時に製作せずに,先ず1台を製作し,2台8本の受信アンテナによる動作検証を経た上で,残り1台を製作し,計3台12本の受信アンテナから成る受信システムを完成することとした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記機能検証を早期に実施し,本システムによる3次元測位の達成に対する原理実証を完了する.その上で,残り1台の受信器製作を行い,実際的な測 位検証に必要なシステム製作を完了する.
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Remarks |
本報告書作成時点で,雑誌論文(査読あり)掲載済1件,雑誌論文(査読あり)掲載決定1件の成果がある.知財の出願については関係者と協議中である.
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