2013 Fiscal Year Annual Research Report
群れにおける多様性とコヒーランスの共立機構の解明と感性計算における応用
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25280091
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
郡司 幸夫 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40192570)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白川 智弘 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 助教 (60582905)
春名 太一 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20518659)
森山 徹 信州大学, 繊維学部, 助教 (20325898)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 群れ / 内部予期 / 非同期性 / ミナミコメツキガニ / レヴィウォーク / 真性粘菌 / 感性計算 / セルオートマトン |
Research Abstract |
ミナミコメツキガニやアユの群れに関する実験的研究に関して、密度の高い群れを一個体とみなして移動するか否かに関し、実験的研究を行った。これは来年度も続行する予定である。また群れ密度が高くなると、一個体では忌避する水域へ群れが進行するという経験則を、実験的に確かめた。この結果は内部予期を組み込んだ群れモデルでも説明できることが示された。またアユの群れに関して、群れ内部で激しい乱流的運動があり、各個体はレヴィウォークをしていることが認められた。この結果は極めて重要な新知見である。 マルチエージェントして理解される真性粘菌感覚計算の実装について、以下の結果を得た。真性粘菌に対して、人間では錯視をもたらすかニッツァ三角形のパターンを誘引物質として与え、錯視同様のパターンが粘菌変形体の原形質分布に認められることを実験的に示した。またこの結果は、内部予期を含むマルチエージェントとして定義された粘菌モデルにおいても形成されることが示され、内部予期の寄与が確かめられた。 内部予期を実装した非同期オートマトンの研究においては、以下の結果を得た。群れに内在すると考えられる非同期性をオートマトンに組み込み、オートマトンでは殆ど認められない臨界的振る舞いが、出現することを示した。すなわち、時間発展規則の局所に対する適用を非同期的とし、かつ非同期的適応と同期的適応の齟齬を調整する規則を付加するとき、その振る舞いが多くの場合、臨界現象的なものとなること、またパーコレーションオートマトンに認められる臨界現象の性格―密度の時間発展が、指数0.1595でのべき分布―が、これら非同期調整型オートマトンで認められることが、示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
動物の群れは従来、運動に関する個体間の変異を取り除き、全個体が向きを一致させることで形成されると考えられてきた。しかし、ミナミコメツキガニの群れ内部には極めて大きなゆらぎが存在し、これを用いて大きな群れが忌避領域へ侵入可能となること、また未成熟なアユの群れにおいて、群れ全体は一方向的運動をするにもかかわらず、群れ内部で各個体はレヴィウォークをすることなどが明らかとなった。また、このような群れ形成機構の主要機構を組み込んだ真性粘菌のモデルや、オートマトンは、万能性を持ちながら計算効率も高くい計算能力を有し、計算精度からの逸脱の副産物として、人間の感性計算を実現できるとの結果を得た。これらは、国際的に重要な雑誌やインパクトファクターの高い雑誌において公表された。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に群れ内部にあるゆらぎの意味を、ミナミコメツキガニやアユ、クロオオアリやトビイロケアリを用いて評価・検討する。特に周囲他個体の運動が単純で予測可能となるとき、個体の運動はそれに見合って単純なものととなり、周囲他個体の運動が複雑なとき、予測の困難さがあるにもかかわらず場当たり的な予測で動くがゆえに内部ゆらぎが生じ、しかし非同期性によって、そのゆらぎが先送りにされることで緩和されることを、実験的に確かめる。 第二に群れ内部のゆらぎの効果によって、周囲他個体の意味が、「または」によって結ばれるか「かつ」によって結ばれるか、スイッチされるだろうことを実験的に確かめる。このスイッチは集団を一個の固まりとみるか、ばらばらな個体の集まりとみるかの違いを意味するもので、群れ形成にとって極めて重要である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2014年4月、申請者が神戸大学から早稲田大学へ異動することが急遽決定し、新たに実験環境を整えるなどの整備費が、当初計画とは独立に発生したため、この分の研究費を担保する必要があった。 マルチ・エージェントとしての粘菌飼育・実験環境の設備設置費、および感性計算のための認知実験用ディスプレイなどの購入
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Research Products
(14 results)