2014 Fiscal Year Annual Research Report
群れにおける多様性とコヒーランスの共立機構の解明と感性計算における応用
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25280091
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
郡司 幸夫 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40192570)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森山 徹 信州大学, 繊維学部, 助教 (20325898)
春名 太一 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20518659)
白川 智弘 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 助教 (60582905)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 群知能 / 動物行動 / 内部観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
沖縄県西表島に棲息するミナミコメツキガニの群れ行動に関する、ビデオ撮影、実験を通して、カニの群れが、個の自由と全体の社会性を共立させていりことが明らかとなった。これを実現する機構として、運動の非同期性と内部予測を実装したモデルが構築された。このモデルは、集団内でのゆらぎを担保しながら一方向的運動を実現する。また、群れの大きさに対する相関領域の大きさが一定値を有するというスケールフリー相関現象がムクドリの群れで認められてきたが、ミナミコメツキガにも同じ現象が認められ、なおかつ提案したモデルによって、この現象が簡単に説明されることも示された。 ミナミコメツキガには干潮になると砂泥から現れ、干潟を徘徊するが、干潟にある川や池には決して一個体では入らない。しかし集団が大きくなり、個体密度が極度に高くなると、突然水域に侵入し渡河する。この現象は、提案されたモデルで簡単に説明可能となった。また、単にフィールド上での観察にとどまらず、動物行動実験が実施された。様々な個体数の集団を水域の一方の岸に配置し、個体数や個体間距離が接近したとき、集団が渡河する結果を、モデルと実験の両者において認めることができた。 稚アユの群れに関してビデオ撮影し、群れ全体の運動と個体の運動とがどのような関係になっているか解析した。その結果、群れ全体は一方向的運動をとるにもかかわらず、各個体は群れ内部で、群れ重心に対して相対的に、ブラウン運動や超拡散と呼ばれる弾道的運動を組み合わせた、最適レヴィ歩行をしていることが判明した。この結果は、定向配列を社会性の原器と考え、その結果群れが形成されるとしてきた従来の学説とは全く異なるものであるのみならず、乱雑な運動と規則的行動という両極端を端成分として結合するという従来のモデルの基盤となるべき点にも変更を加えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、カニの群れとアリの集団などを用いて、群れ内の相互作用に関する実験とモデル構築を進めてきたが、近年研究が進んできた動物の探索戦略に関して、群れ内部の動物の振る舞いを調べたことにより、全く新しい事実が判明した。それは、群れ内部の個体が、他個体とのコミュニケーションを資源として、いわゆる探索と集中的搾取の間のジレンマを解消する戦略をとっているという現象である。すなわち、或る他個体と集中的にコミュニケーションをとるか、多くの多様な個体とコミュニケーションをとるかという問題に関して、動物の群れは、いずれかに決定せず、両者をほどよく取り込む戦略をとっているとデータが得られたのである。 このような現象の発見は世界初であったが、多くの有力な国際雑誌が近年、スクール制の確立した研究室以外からの論文を編集者レベルで落とし、査読者に回さないため、出版公表までに手間取った。しかしNatureが新たに導入したオープンアクセスの雑誌、Scientific Reportに受理され、査読者に高評価を得た。また同時期にRoyal Societyが導入したオープンアクセス雑誌Open Scienceへ投稿したアリの論文も査読者に回され高評価を得ている。これらによって予想を上回る進展の客的評価が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、現在までの達成度で述べた結果を踏まえて、群れ内部でのコミュニケーションの在り方、コミュニケーションをとる個体の頻度分布や空間分布などを解析する。それによって、各個体が、コミュニケーションを資源として群れ内部でどのように資源調達をおこなっているか、詳細に評価する。昨年、本研究では、ミナミコメツキガニの個体にマーカーを貼り、これによって動画における個体識別の自動化に成功した。これを用いて群れ内部での大量の個体データが得られたため、従来不可能だったデータ解析が可能となった。また、群れが群れ全体を一個の超個体として振舞う環境を用意し、そのような振る舞いに至る前と後とで、群れ内部の個体の運動が、コミュニケーション資源調達に関してどのように変化するかを評価する。これは水辺などの環境を実験室内部に設置することで可能になると考えられえる。 第二に、アリの個体間相互作用が、アリの運動像知覚にどのような影響を与えるかを評価する。本研究では、アリが変化する風景に対応し、探索行動を変える実験結果を得てきたが、さらに今後は、アリが運動自体を知覚できるか否か実験的に評価する。運動の知覚には、瞬間のスナップショットではなく、時間の幅が必要となる。このような時間幅は、経験によって大きく変化すると考えられるが、アリの場合、個体の経験と共に他個体の経験の影響が大きいと考えられる。そこで、道標フェロモンの影響など、個体間相互作用がどのように運動知覚に影響するか実験的に評価する。 第三に、現在進行中の、原形質をマルチエージェントと捉えた真性粘菌に関して、曖昧な環境情報に対する二値化を真性粘菌が実現しているという現象を実験的、理論的に明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
旅費が想定以上に節約できたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文の英語校閲代、論文投稿料など
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Research Products
(41 results)
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[Presentation] 世界の貼りあわせと表現耕法2014
Author(s)
Gunji YP, Sonoda K, and Basios V
Organizer
第15回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会
Place of Presentation
東京
Year and Date
2014-12-14 – 2014-12-15
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